agreeable 第68号(令和5年10月号)
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1.隆徳殿の概要2.試験方法かっている登梁(のぼりばり)をケオといいます。特に南北方向のケオは頂部から庇端部まで架かっている長大な登梁です(図1)。隆徳殿の内部に壁はありません。外壁は南側の開口部を除き、裳階の柱の外側にレンガ積み漆喰仕上げの壁を設けています(写真1〜5)。外壁上端に四角穴が見えますが、それはケオの先端と外壁の干渉を避けるための穴です。よって、隆徳殿は躯体の架構と外壁に構造的な繋がりはありません。また、修復前の南面開口部には木製建具(写真1)が見えますが、これは後から設置したものなので、修復時に撤去しています(写真2)。修復前の各写真でお分かりのように外壁、屋根瓦、軒先など相当に痛んでおり、架構を構成する各部材にも腐朽・蟻害が見られました(写真1、3、5)。実験は、2005年8月に修復前の隆徳殿、2011年2月に修復後の隆徳殿について実施しました。実験の目的は、修復前後の柱の転倒変形角(γ)を確認し、修復の効果を定量的に確認することです。図1の平面図に柱の番付を示します。図中の○で囲った柱の水平方向変位を計測しました。その柱の番付は以下のとおりです(太字は加力点柱)。南北方向加力: 3A、3B、3C、東西方向加力: 1D、2D、3D、柱頭と柱脚に変位計を取り付けます。柱頭の水平変位から柱脚の水平変位を差し引いた値が真の水平変位(δ0)です。転倒変形角(γ)3D、4D、3E4D、4C、5D隆徳殿は、グエン朝時代(1802隆徳殿は平家で棟高約6・5m、〜1945年)の初期1804年頃に建造された唯一現存する未修復の木造建築物で、皇城内では南東方向の東端に配置されています(その1:図1右下)。1辺約12mの正方形(5間×5間)の木造建築です。躯体の架構は、中央の4本の柱で支えられた部分の身舎(おも隆徳や殿)、その周りの庇(ひさし)、外周部分の裳P階(もこし)から成っています。身舎、庇、裳階に架NP庇庇西P123P04南N56庇庇PFDCB1PA23P456P0庇庇庇P西C東DFDCBAP123P4南56N8 LABORATORYARCHITECTUREWASEDAUNIVERSITY200010005000mmlong[iルn早稲田大学アジア建築研究室[昱BA階裳裳階庇裳階庇裳階E東力加向方北南階裳舎身階裳身舎裳階東西方向加力E北東南西力加向方北南舎身階裳WASEDA UNIVERSITYASIAN REGIONAL ARCHITECTURELABORATORY100020005000mmCTURE5000mmASIANREGIONAL早稲田大学アジア建築研究室研究室昱 [iルn long [昱 隆徳殿FE裳階身舎南北方向加力身舎庇裳階東西方向加力北写真2 隆徳殿南面(修復後2011)写真4 隆徳殿北西面(修復後2011)写真6 加力治具と柱頭の変位計写真8 東西方向加力(修復後2011)庇裳階身舎庇裳階東西方向加力北ものつくり大学 小野 泰agreeable No.68 October 2023/10図1 隆徳殿の平面・断面図写真1 隆徳殿南面(修復前2005)写真3 隆徳殿北西面(修復前2005)写真5 庇・裳階の柱頭とケオ写真7 南北方向加力(修復前2005)その2隆徳殿の構造性能についてベトナム・フエ隆徳殿の構造性能と耐久性能

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