agreeable 第68号(令和5年10月号)
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1.石綿(アスベスト)とは2.石綿規制について3.改修工事等受注者の責務 2023年10月1日から建築物の解体や改修工事を行う際には、建材等に石綿が使用されていないか確認するため、有資格者(建築物石綿含有建材調査者)による事前調査が法令により義務付けられました。既存建築物のしろあり防除施工においても、壁面等に電動ドリルで穿孔する場合は法令上の改修工事に該当することになり、関係法令に定められた措置を適正に講じて施工を行う必要があります。石綿は、天然の繊維状鉱物で、耐火性、断熱性、防音性などに優れ、酸やアルカリにも強く安価なことから建築物や工業製品に大量に使用されてきました。高度成長期を中心に、輸入・製造された原石綿は約1000万トンとされています。そのうち約8割が建築材料として、さらにその9割が石綿含有成形板として使用されてきました。鉄骨造やRC造等の建築物に耐火被覆材、断熱材、吸音材として吹付や成形建材として使用されてきたことはよく知られています。木造住宅においても窯業系サイディング、屋根用化粧スレート、軒天のけい酸カルシウム板1種などの外装建材、内装壁下地せっこうボード、床ビニルシート・タイルなどの内装建材や仕上げ塗材などにも石綿が含まれているものがあります(図1)。石綿の繊維は非常に細かいため空気中に飛散しやすく、その粉じんを吸い込むと肺の組織内に沈着し、長期間滞留することによって石綿肺や悪性中皮腫など重い疾患を引き起こすことが知られています。石綿は、存在していてもそれ自体が直ちに健康障害を起こすわけではなく、工事や劣化によって建材等から脱落、飛び散ったものを作業者や居住者が吸い込むことで問題となるため、労働安全衛生法や大気汚染防止法、建築基準法、廃棄物処理法などで様々な措置が図られています。石綿による健康障害防止に関して、予防及び健康管理に必要な措置を講ずる目的で1960年に「じん肺法」が制定されましたが、石綿製品の有用性から使用を禁止することなく管理して使用することとしました。その後も規制は段階的に強化が図られ、1975年には特定化学物質等障害予防規則の改正により、石綿含有量が重量の5%を超える建材を用いた吹き付け作業を禁止しています。その後、1995年には石綿含有量が1重量%を超える建材も使用禁止となりました。ようやく2006年9月1日から労働安全衛生法施行令の改正により、ごく僅かな特殊用途を除いて石綿含有量が0.1重量%を超えるものの製造、輸入、譲渡、提供及び使用が全面的に禁止になりました。石綿による健康被害は潜伏期間が20〜50年余りと長く、その健康被害は、もっぱら石綿を扱う労働者の問題と考えられてきました。しかしながら2005年6月になって、石綿製品を製造していた工場の周辺住民に石綿疾患が発生していることが報道されたことを契機に、石綿を含有する製品の管理使用ではなく、全面禁止の方向に向かうことになりました。建築物の改修工事とは、建築物に現存する建材に何らかの変更を加える工事で、解体工事以外のものをいいます。リフォーム、修繕、各種設備工事、塗装や外壁補修等で既存の躯体の一部の除去、切断、破砕、研10agreeable No.68 October 2023/10図1 住宅における石綿含有建材の使用部位(国土交通省資料より作成)防除技術委員会 土井 正国交省資料より石綿含有せっこうボード石綿含有せっこうボード石綿含有ビニル床タイル石綿含有ビニル床シート石綿含有壁紙石綿含有窯業系・石綿含有建材複合金属系サイディング石綿含有けい酸カルシウム板第1種石綿含有けい酸カルシウム板第1種石綿セメント円筒石綿含有住宅屋根用化粧スレート石綿含有ルーフィング改修工事等に際して有資格者による 石綿事前調査が義務付けられました

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