護法が平成30年に改正、翌31年4月から施行され、地域における文化財の総合的な保存・活用を推進するために都道府県においては総合的な施策の「文化財保存活用大綱」の策定、市町においては文化財の保存及び活用に関する基本的な方針や講ずる措置の内容、調査に関する事項等を記載した「文化財保存活用地域計画」の作成ができることとされました。これにより各地域でも文化財の保存・活用の基本的な方針を明示することにより各自治体での市町が基本的な方向性を共有しながらそれぞれ主体的に保存と活用に取り組み、お互いに連携することが可能となります。また市民の文化財に関する関心や理解が深まり文化財をより適切に保存活用することが期待されます。大綱の中には「地域における歴史的、芸術的、学術的価値の高い文化財の調査を進め新たな文化財の指定等に取り組むとともに所有者が行う保存・修理への支援のほか、災害対策の強化などに取り組み文化財の保存活用の推進に努めます」とありますが、しかしながら現実では予算や人員不足などを理由に補助を受けられる物件はごく一部に限られ、ほとんどの物件は近い将来失われや四季のすばらしさをしみじみ感じます。私が生きている間はこの家を遺すのが私の使命です。ただ子や孫たちがこの家へ帰ってくるかどうかわからないけれど」江戸前期1694年建立の築300年を超える寺院。度重なる震災や自然災害に耐えて現在まで遺っているのは地域の熱心な檀家や信者の方からのお布施や浄財によって手厚い保護があったからと思われます。しかしながらイエシロアリの被害が酷く梁や桁にまで被害が及んでいることが確認され、耐震強度調査では震度5クラスの地震が来れば倒壊の危険性が非常に高いと診断されています。今後、檀家や信仰者の減少で修復できるほどの寄付や浄財が集められるとは思えず、対応に苦慮されていらっしゃいました。文化財を取り扱う設計者の方にお伺いすると、神社仏閣に関しては築300年というのは中間的な立場で、よほど歴史的文化的評価をされないと文化財登録には至らないとのこと。確かに愛媛県内でも国の重要文化財や国宝に指定されている社寺は鎌倉や室町時代に建立された3か所のみ。急速な過疎化と人口減少そして現代の信仰離れにより国や自治体の援助や保護もない社寺は滅失散逸等が加速していくと思われます。このような状況を踏まえ国では文化財保施工をご依頼いただきました。調査中に携帯で会話されていた言葉が聞きなれない言語でしたので、お伺いすると東欧の言語らしく5か国語を会話できるほど語学堪能でいらっしゃるということ、失礼ながら年齢を確認すると99歳ということに再度驚きました。「海外で暮らしているとこの日本文化ていくものと思われます。最近では古民家を改装して宿泊施設やカフェなど立地条件などが優位な場所で民間での活用は一部で進んでいますが中には安易な改装で、その建物が持つ構造物の特色などが消されてしまい風情を持たない物件になってしまったものも増えているという話も耳にします。今後は保護され残る文化財もあれば、加速度的に増加していくであろう歴史と記憶から消えゆく文化財。少しでも後世に残していく対策が早急に必要と思います。◎ 3例目は、築300年を超える寺院 15agreeable No.68 October 2023/10慶応3年 大政奉還・江戸最後の年古い書籍もシロアリの被害に遭っていました
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