トリコモナスの仲間クティラ属の1種トリコモノイデス属の1種トリコミトプシス属の1種クリスタモナスの仲間デヴェスコヴィナ属の1種ステファノニンファ属の1種フトの小説を元にした「クトゥルフ神話」と呼ばれる架空の物語世界がありますが、そこに登場するクトゥルフ神の娘にあたる神の名が「クティラ」です。これらの神が持つ顎髭のような多数の触腕を鞭毛に見立てたようです。ヤマトシロアリに共生する小型の原生生物です(図オオシロアリに共生する原生生物です(図4)。この種は核を1個、軸桿を1本持っていますが、「4本の前鞭毛、1本の後鞭毛と波動膜、副基体」のセットを2組もつ、という興味深い形態をしています。実はこの形態はとで、運動の能力が向上したり、細胞を大きくしたりできることでこのような進化が起きたのかもしれません。種です(図6)。トリコモナスの仲間と同じように、1つの核と1個の鞭毛系(3本の前鞭毛、1本の後鞭毛を含みます)を持ちます。後鞭毛は幅広く、波動膜と似たような帯状の構造をもちます。同じくコウシュンシロアリに共生する種です(図7)。この種は多数の核と鞭毛系のセットを持ち、これらは細胞の前端部分から螺旋状に配置されています。螺旋状に配置された多数の鞭毛が打つことで、スピロトリコニンファの仲間と同第3回目の今回は、比較的小型の種を中心に、「トリコ2 モナス」の仲間、「クリスタモナス」の仲間、「オキシモナス」の仲間をご紹介します。トリコモナスの仲間には、シロアリだけでなく、哺乳動物や両生類の消化管などに寄生する種が多く含まれます。核が一つで、数本の鞭毛と副基体を持っていますが、種にヤマトシロアリに共生する小型の原生生物です(図2)。1個の核を持つ球形の細胞ですが、細胞の前方に伸びる5本の「前鞭毛」と、後方に伸びる1本の「後鞭毛」を3)。1個の核、4本の前鞭毛と1本の後鞭毛を持っていますが、後鞭毛は波動膜を構成し、これを波打たせることで運動します。波動膜は細胞の後端まで達します。1本の軸桿がありますが、細胞からあまり突出しません。近縁な種の細胞が分裂する時期の形態にそっくりです。細胞分裂期の期間が大幅に延長され、通常の状態になることでこのような形態が進化したと考えられます。波動膜が2枚になるここの原生生物のグループの形態は、非常に多様性に富んでいます(図5)。トリコモナスの仲間のように1つの核と1つの鞭毛系を持つ種、多数の核を持つ種、1つの核に多数の鞭毛系を持つ種があります。コウシュンシロアリに共生するよってはこのうち1本の鞭毛に細胞の表面の膜が付着し、「波動膜」という膜状の構造をつくります(図1)。細胞は、鞭毛を規則的に打つ動きと、波動膜が起こす波打つような動きによって水流を起こして運動します。持っています。1本の軸桿を備え、細胞から突出します。前鞭毛を同期して波打たせることで運動しますが、その運動性はあまり高くありません。アメリカ合衆国の怪奇・幻想小説作家H・P・ラヴクラ第3回茨城大学理学部 北出 理agreeable No.68 October 2023/10図1 トリコモナスの仲間の細胞の模式図 A:波動膜を持たない種 B:波動膜を持つ種図3 トリコモノイデス属の1種 A:生きた細胞 B:染色標本図5 クリスタモナスの仲間の細胞の模式図 A:鞭毛系を1つ持つ種 B:多核・多鞭毛系の種 C:多数の鞭毛系を持つ種図6 デヴェスコヴィナ属の1種図2 クティラ属の1種 A:生きた細胞 B:クトゥルフを描いた絵(Dominique Signoret, signodom.club.fr)図4 トリコミトプシス属の1種 鞭毛、波動膜、副基体を2組ずつ持ちます。シロアリのお腹の中をのぞいてみよう-共生原生生物の話-
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