agreeable 第68号(令和5年10月号)
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オキシモナスの仲間ディネニンファ・エグジリスディネニンファ・ポルテリピルソニンファ・グランディス原生生物の形態の進化文献₁) a(2012)PosOne状に後端まで伸び、短く遊離します。核は細胞の中心部よりやや前寄りに位置します。ヤマトシロアリに共生する原生生物です(図10)。細胞は細長く、螺旋状にねじれたような形をしています。4面に、まばらに細長い細菌が付着することがあります。これまでご紹介してきたように、シロアリに共生する原生生物の形態は非常に多様です。核の個数も1個の種と複数の種があり、鞭毛系を1つだけ(鞭毛数本だけ)もつ種と、多数の鞭毛系を持つ種があり、また波動膜を持つ種と持たない種があります。これらの特徴はどのように進化してきたのでしょうか。トリコモナス・クリスタモナス・トリコニンファ・スピロトリコニンファの仲間が含まれる「パラバサリア」のグループを対象に、SSU rRNA・EF1︲α・アクチンという3つの遺伝子の塩基配列を調べてそこから系統関係を推定した研究 1)では、図12のような推定結果が得られています。が独立に何回も進化したと考えられます。さらに、シロアリの腸内に共生するクリスタモナスの仲間の一部、スピロトリコニンファの仲間、トリコニンファの仲間では、それぞれ独立に鞭毛系の数が多数に増加し、複雑な形態が進化しました。これらの仲間では細胞が非常に大型化した種も多く出現しました。シロアリの消化管という狭い場所で生活する生物であるにもかかわらず、運動能力を上げる仕組みが何度も進化したのは、鞭毛を使って運動することが、木材を分解する代謝系の反応全体の促進につながり、原生生物とシロアリにとって有利だったからかもしれません。じように、ドリル状に回転しながら前進します。細胞内に多数の木材を取り込んで消化します。から遊離します。オキシモナスの仲間の種は軸桿を波打たせるように動かすことが可能な種が多く、この動きによって細胞を運動させます。ヤマトシロアリに共生する原生生物です。細胞は細長く、螺旋状にねじれたような形をしています(図9)。細胞前端から4本の鞭毛が生じ、これが細胞表面に付着しつつ螺旋本の鞭毛は細胞表面を螺旋状に細胞後端まで伸び、遊離します。核は細胞前端部に位置します。この種の細胞には、細長い共生細菌が付着しており、その付着のしかたによって4タイプに分けられています。ヤマトシロアリに共生する原生生物です(図11)。細胞は葉巻型あるいは洋梨型です。4本の鞭毛は細胞表面を螺旋状に後端まで伸び、遊離します。細胞に鞭毛が付着している部分は、稜を形成するか、波動膜状になります。核は水滴型で細胞の前端部にあります。細胞表この結果に基づくと、パラバサリアの共通祖先は1個の核と1つの鞭毛系をもつ単純な構造の種だったと考えられます。このような祖先から、波動膜を持つグループオキシモナスの仲間はこれまでこの稿で紹介してきた原生生物(パラバサリア)とは異なるグループの原生生物ですが、やはり酸素に弱い嫌気性生物です。1個の核と、4本の鞭毛、軸桿を持っています(図8)。ディネニンファやピロソニンファの仲間では鞭毛が特徴的で、細胞の先端から生じた4本の鞭毛が、細胞表面に付着したままで細胞を螺旋状に取り巻いて細胞後端に達し、そこ3agreeable No.68 October 2023/10etl. Nodae29938l7:.        図8 オキシモナスの仲間の細胞の模式図 A:オキシモナス属などB:ディネニンファ属やピルソニンファ属図12 パラバサリアのグループ間の系統関係 記号はそれぞれの形態進化が起きたと思われる位置を示します。図10 ディネニンファ・ポルテリ図7 ステファノニンファ属の1種 細胞の前部に多数の核と鞭毛をもち、それぞれの核付近から伸びる軸桿が細胞後部で集合し、束になります。図9 ディネニンファ・エグジリス図11 ピルソニンファ・グランディス

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