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しろありNo.151

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概要

しろありNo.151

とを考えると,おそらくコンテナや木材などの交易物資に入り込んだものが,偶然に持ち込まれたものと推測される。年の発見時にすでに数多くの個体の活動が認められたことから,本種は 年以前に当地に侵入,定着し,繁殖を繰り返していたものと推察された。本種は 年以降も衰えることなく繁殖し続け,その分布域は広がる一方である。現在では,広島県,山口県 )以外に,兵庫県( 年)),愛知県(年)),岐阜県( 年)),神奈川県( 年))でも確認されており,全国的な問題となりつつある(図)。生 態食性アルゼンチンアリは基本的に雑食性であるため何でも食べるが,中でも砂糖や花蜜,アブラムシやカイガラムシが分泌する甘露などの甘味成分を好む。営巣性本種は在来種のように,地中深く巣穴を掘ることはない。営巣場所は,植木鉢やプランターの下,家の壁の隙間や床下,ブロック塀やコンクリートの隙間や割れ目,倒木や石の下,放置された古タイヤの中,積まれた落ち葉の下,立ち木や雑草の根の隙間,など様々であるが,比較的人手の入った環境を好む傾向が高い。活動温度帯と繁殖力本種の活動温度帯は非常に広く, と言われている )。在来種のように冬眠はせず,ほぼ一年中活動しており,真冬でも屋外で姿を見かけることは珍しくない。広島地方では,例年, 月下旬頃より繁殖活動が盛んになり, 月から 月初旬にかけて個体密度が最大となる。本種の女王アリ(写真 )の産卵能力は非常に高く,条件が良いと 日に約 個の卵を産むとされている。この卵は約 ヶ月で成虫となる )。また,一般的なアリとは異なり,アルゼンチンアリの巣には多数の女王アリが存在する(多女王制))。大きな巣では何百もの女王アリがおり,頭を越す場合もあるという。被 害不快害虫としての被害アルゼンチンアリは,しばしば集団となって家屋内に侵入し,食べ物にたかったり部屋中を徘徊することで,住人に対して不快感を与える。毒針は持たないので,人が本種に刺されることはないが,本種は非常に攻撃的な性質を持っており,小さな大顎で盛んに咬んでくる。農業害虫としての被害本種は,農作物の害虫であるアブラムシやカイガラムシと共生関係を結んでいる。アブラムシやカイガラムシが分泌する甘露を貰う代わりに,外敵から彼らを保護し,結果的にその被害を助長してしまっている )。また,本種自身が,果物,柑橘類,イチジク,コーヒー,サトウキビ,トウモロコシ,綿などの芽,花,実をなどを直接的に加害する農業害虫としても知られている , )。侵入害虫としての被害本種は侵入した地域で,在来のアリを駆逐し置き換わることで,在来の生物相に重大な悪影響を及ぼす , , )。現在,分布の中心である廿日市市の平野部では,まさにアルゼンチンアリだらけと言っても過言ではないほど個体数は多く,他種の在来アリはサクラアリなど小型種を除くとほとんど見かけることはない。分布の拡大アルゼンチンアリは多女王多巣制種で,女王アリは結婚飛行せず,巣内でオスと交尾したのち母巣に居残り繁殖する )。女王アリの繁殖力は高く,働き( )写真 アルゼンチンアリの女王アリ(羽を落とした状態)(著者撮影)