ブックタイトルしろありNo.153

ページ
56/64

このページは しろありNo.153 の電子ブックに掲載されている56ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

しろありNo.153

ブックを読む

Flash版でブックを開く

概要

しろありNo.153

外のヤマトシロアリのコロニーが生産する有翅虫の性比はどうかというと,この予測とは逆に,むしろ若干雌に偏っている。この食い違いはどう説明されるのか。何か,雌が圧倒的な適応的利益を得るような仕組みがなければ,力学的均衡が成立しない。単為生殖による女王位継承システムマイクロサテライトマーカーを用いて王や女王を含む野外コロニーの完全サンプルの詳細な遺伝子解析を行った(図)。その結果明らかになったヤマトシロアリの繁殖システムは,これまでの常識を覆す驚くべきものであった。女王は有性生殖と単為生殖を使い分けており,二次女王は単為生殖で生産し,ワーカーや有翅虫は有性生殖で生産していることが判明した)(図)。二次女王は創設王と創設女王の娘ではなく,創設女王が自分の遺伝子のみで作った,いわば創設女王の分身であった(二次女王からみた創設女王の回帰血縁度は,, )。そして,二次女王は創設王とは全くの非血縁であった( ,, )。この仕組みにより,創設女王は自らの死後も次世代への遺伝的寄与をそのまま維持していた。亡き創設女王とワーカーとの血縁度は( , ),有翅虫との血縁度は( , ) であり,これらの値は(生存中に王との間にできた有性生殖の子に対する血縁度)と有意差はなかった。シロアリの単為生殖は末端融合型のオートミクシスであり) ),単為生殖で作られた二次女王の遺伝子型はホモ接合になる(母親がなら,子はか図)。個体としてヘテロ接合度は急激に低下するが,二次女王間では遺伝子座によってどちらのアリールのホモになるかが異なる。ヤマトシロアリの染色体数はなので,単為生殖で産まれる子の染色体の組み合わせの数は, 通りである。創設女王が産んだ二次女王同士で完全クローンになる確率は万分の以下である。匹以上にもなる二次女王の集団全体としては創設女王が有していた遺伝的多様性を維持することになる。別の言い方をすれば,コロニーが存続する限り,創( )図マイクロサテライト遺伝子解析による単為生殖の判定