ブックタイトルしろありNo.154

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しろありNo.154

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概要

しろありNo.154

( )しろあり年月はじめに建築材料として,スギ材利用を促進するためには,その木材材質が重要となり,木材材質の変動およびその原因を明らかにすることが不可欠である。筆者らは,これまで,南九州地域で生育するオビスギ品種材を対象に,組織構造的な材質指標および力学的性質の変動およびその原因について,研究を行ってきた) )。加えて,スギ材の用途をさらに拡大するためには,とくに屋外での利用促進を進める必要がある。したがって,耐久性およびその変動が重要となる。木材の耐久性は薬剤処理によって高めることができるものの,近年,耐久性に優れた木材を環境に負荷をかけない方法で供給することが求められている。スギなど主要国産材の耐朽・耐蟻性が,個体間差,地域差,遺伝的相違などと関連して評価されるべきである)と指摘されており,まず,本来スギ材が持つ耐久性について,その変動を明らかにする必要がある。しかし,スギ品種材の耐蟻性についての研究は少なく,基礎データの蓄積が望まれる。オビスギ品種群は,飫肥林業で育成されたスギ品種群であり,かつて,飫肥林業は弁甲材生産で隆盛を極めた。この飫肥林業での弁甲材生産は,植栽密度本以下の疎植であり,育林施業に特徴があった。その木材材質は,曲げやすいわりに強度があり,耐久性に優れ,弁甲材として高い評価を得ていたようである。オビスギ品種材(ヒダリマキ,タノアカ)は,精油成分が多いことが報告されており),その耐蟻性が期待される。また,抽出成分について,抽出成分の種類や含有量についての研究は多数あるものの,抽出成分の組織内分布についての研究例は少なく,木材の耐久性を考える上で,抽出成分の組織内分布について知見を得ることも重要である。本稿では,オビスギ品種材のシロアリ抵抗性,抽出成分の組織内分布および心材形成への植栽密度の影響について,われわれの最近の研究を紹介する。方法オビスギ品種材のシロアリ抵抗性宮崎県北郷町に設定されたオビスギ品種別展示林( 品種, 年生)に生育するスギ人工造林木を供試木とした。オビスギ品種のほかに,対照スギ品種としてヤブクグリとクモトオシの品種,計品種の林木を用いた(同一林分で生育)。胸高部付近から円板を採取し,心材部および辺材部から,ブッロク試験片を作成し,シロアリ摂食試験を行った。飼育期間中に死虫数を測定し,実験開始前に投入したシロアリ頭数に対する死虫率(%)を求めた。加えて,実験開始前後の気乾重量から,重量減少量( )を算出した。抽出成分の組織内分布品種不明のスギ材とマツ材を使用して,簡易プレパラートを作成し,アルゴンレーザーおよびヘリウムネオンレーザーを装備した共焦点レーザー顕微鏡( )を用いて,対物レンズ倍( )で観察し,自家蛍光による抽出成分の観察が可能であるかを検討した。で用いたスギ品種材のブロック試験片について,抽出成分の組織内分布を観察した。植栽密度の心材形成への影響試験林は宮崎県北郷町坂谷国有林に設定されたスギの円形植栽密度試験林を用いた。この試験林のスギ品種はオビスギ品種群のつ,トサアカであった。円形の中心に近い同心円上の植栽は密植で,外側に向かって段階的に疎植になる。初期植栽密度が( 本), ( 本), ( 本),( 本), ( 本)の各区分から一本ずつ合計本の試験木を用いた。基本的な木材材質に加えて,心材幅と心材年輪数を測定した。研究トピックスオビスギ品種材のシロアリ抵抗性について雉子谷佳男