ブックタイトルしろありNo.154

ページ
44/56

このページは しろありNo.154 の電子ブックに掲載されている44ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

しろありNo.154

ブックを読む

Flash版でブックを開く

概要

しろありNo.154

結果精油成分が多いとされるオビスギ品種材の心材および辺材でのシロアリ抵抗性は,他地域スギ品種材にくらべて優れているとは言えないことがわかった。有意差は認められなかったものの,品種によってシロアリ抵抗性に異なる傾向が認められた。アルゴンレーザーとヘリウムネオンレーザーを装備した共焦点レーザー顕微鏡で, つの抽出成分の組織内分布を自家蛍光で観察することができた。抽出成分の組織内分布とシロアリ抵抗性との間には,密接な関係があり,とくに,ヘリウムネオンレーザーで観察される抽出成分が細胞壁中に多量に存在するほど,シロアリ抵抗性が向上すると考えられた。心材形成への植栽密度の影響を調べたところ,図のような結果が得られた。疎植になると心材の幅および心材の年輪数が増大することから,心材化の速度が早くなると考えた。結果として, 本の植栽密度で生育したトサアカは心材が極めて多い樹幹となった。現在は,抽出成分(フェルギノール)の含有量への植栽密度の影響を調べているところである。考察オビスギ品種材は,かつて弁甲材として,曲げやすさと耐久性から高い評価を得ていた。しかし,前述の結果から,同一林分内で生育した他地域のスギ品種材に比べて,オビスギ品種材の耐久性が優れているとは言えず,オビスギ品種材の耐久性が遺伝的に優れているとは言えないようである。一方,トサアカで植栽密度を疎植にすると,心材形成が促進されることがわかった。飫肥林業の弁甲材生産は,本以下の疎植であったことから推測すると,植栽密度の影響を受けやすい品種を選び,心材生産に重点を置いた林業であったのかもしれない。また,共焦点レーザー顕微鏡では,組織の光学的な断層像が観察できるため,抽出成分が細胞の内こうに存在するのか,細胞壁中まで浸透して存在しているのかを判別することができた。スギが本来もつ耐久性をさらに増大するためには,どのような木材生産方法が最適なのか,今後,基礎データをもとに探っていきたい。引用文献)雉子谷佳男・北原龍士( ) 南九州産スギ材の材質─オビスギ品種材の材質特性─,材料, ( ),)雉子谷佳男・北原龍士( ) スギ実大材曲げ性能への木材材質指標の影響,材料, ,)雉子谷佳男・北原龍士( ) オビスギ品種における木材材質の高さ方向の変動,木材学会誌, ,)土居修一( ) 木材保存に関する技術開発・研究の現状と課題,木材学会誌, ,)長潰静男・田崎正人( ) スギ材油のテルペノイド成分─オビスギの特異性について─,木材学会誌,,(宮崎大学農学部准教授)( )図心材形成への植栽密度の影響