ブックタイトルしろありNo.154

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しろありNo.154

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概要

しろありNo.154

( )しろあり年月はじめに日本において,現在のところ,シロアリ被害の大部分はイエシロアリやヤマトシロアリなどの土壌性シロアリによって引き起こされている。土壌性シロアリは地中に営巣し,地面から建築物に蟻道を作って侵入する場合がほとんどである。このことはすなわち,地面と基礎や土台の間に効果的なシロアリバリヤーを設けることができればシロアリ被害を阻止または大幅に減少できる可能性を示している。この目的で,金属板を用いたアリ返し,目の細かいステンレスメッシュや粒径をそろえた砂粒などが研究開発,あるいは実用化されている。これらは,物理的にシロアリの侵入を防いでいることから,物理的防除方法と呼ばれているが,高度な技術が要求されたり,コストがかかるなどの問題点がある。我々は,化学的防除,物理的防除に続く第の防除技術,すなわち生物的(生理的)防除の可能性について検討を続けている。その中で,シロアリの興味深い生理・本能を見つけた。それはシロアリはヒラヒラしたフィルムなど,強度の期待できないものには蟻道を作らないという性質である。この生理・本能を元に,ヒラヒラしたフィルムを用いたシロアリバリヤーの開発を試みた。このように簡単なフィルムでシロアリの被害を防止できるなら,駆除薬剤に起因する健康被害や環境に対する影響を完全に取り去った,低コストのシロアリ防除が可能になる。また,建築物の解体時にも何ら問題を生じない。さらに,シロアリも環境の重要な一員であるとの認識の元に,床下にシロアリがいても家屋を食害しなければ存在を許そうという,シロアリとの共存を目指した防除システムが構築できる可能性があることから,この原理に基づく防除技術を開発することは重要であると考えた。なお,本報告は平成年度平成年度科学研究費補助金(課題番号,萌芽研究)の成果の概要である。また,本報告では実験の詳細についてはふれずに,結果の概要のみを記すので,興味を持たれた方は引用文献を参照して頂きたい) )。発見の経緯着想の原点はアサガオの蔓である。アサガオの蔓はピンと張った糸には巻き付くが,垂らしただけの,ブラブラした糸には巻き付かない。シロアリに関しても,強度が期待できない場合は蟻道をのばさない可能性があるのではないかと考えた。そこで,幅の帯状に切ったフィルムを上端がヒラヒラした状態でステンレス製イエシロアリ飼育箱の内面に,水平方向に一周させるように貼り付けた。その結果,下からあがってきたイエシロアリの蟻道はヒラヒラしている部分に到達するとそれ以上蟻道をのばさずに,横方向に転向した(図)。ここで興味深いのは,研究トピックスシロアリはヒラヒラしたフィルムに蟻道を作らない─ フィルム型シロアリバリヤーの効果と限界─藤本英人図水平に貼付したフィルムで蟻道が阻止されている様子注両面テープ固定部には蟻道が作られているが,ヒラヒラしている部分には蟻道をのばそうとしない