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しろありNo.155

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概要

しろありNo.155

?研究トピックス? 光刺激に対するシロアリの警報行動―自己振動を使って仲間に危険を知らせる―大村和香子 ( 10 )しろあり No. 155, pp.10―12. 2011年1月1. はじめに シロアリは通常,土壌や木材中など暗いところで生活しており,体表が乾燥するのを嫌うため,風(空気)の動きや(太陽)光に非常に敏感である。また,シロアリは目が未発達なため,光の強さ以外は感じ取ることができない。例えばシロアリに急に強い光を当てると,歩く速度が速くなるのと同時に,独特な行動,すなわち自分の頭部を地面や周囲の壁に打ち付ける?頭突き行動(tapping タッピング,もしくはhead-banging ヘッドバンギング)? や,体を前後に小刻みに揺する?ゆすり行動(tremulation トレミュレーション)? を起こす(図1)。このようなシロアリの行動は,地面や壁を振動させたり,ごく近傍の空気の流れを生じさせることで,巣仲間に危険を知らせる警報行動と考えられている。警報行動というと,兵蟻の出す種特異的な防御物質に関しての研究例は非常に多いが,自己振動を使う行動に関しては,古くから一般的に知られていたものの,シロアリがどのようなパターンで動くのか,シロアリの種類によって動くパターンは違うのか,といったところについてさえ,ほとんど明らかになっていなかった。 筆者らは,これらのシロアリの警報行動を高速度ビデオカメラを使って記録・解析を試みた1)。一般的なビデオカメラは1秒間に30枚の撮影を行うが,今回使用した高速度カメラは,最高で1秒間に10万枚の撮影が可能で,これまで記録できなかった速い動きが記録・解析できる装置である。2. 研究の方法2.1 供試シロアリ シロアリの種類によって急激な光刺激に対する警報行動のパターンが異なるか検討するため,日本国内に生息するオオシロアリ科のネバダオオシロアリ(Zootermopsis nevadensis(Hagen)),ミゾガシラシロアリ科のイエシロアリ(Coptotermes formosanusShiraki) とヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus(Kolbe)),レイビシロアリ科のアメリカカンザイシロアリ(Incisitermes minor(Hagen))を選定した。2.2 行動計測方法 各種シロアリを試験容器に入れ,暗室に放置して暗環境に慣れさせる。次に白色LED 光を照射し,照射直後から各個体が示す?ゆすり行動? と?頭突き行動? を,高速度ビデオカメラで撮影・記録するとともに,その振動行動パターンについて周波数や変位量(動いた距離)を計測し,シロアリ種間の比較と兵蟻と職蟻との違いについて検討した。 ?ゆすり行動? を観察すると,3対の脚が付いている胸部を中心に,体軸方向前後に往復する動きをしていることがわかった。一方,?頭突き行動? に関しては,頭部と胸部が連動して,シロアリが乗っている地面に対してほぼ垂直方向に上下運動を起こすことが明らかとなった。そこで?ゆすり行動?,?頭突き行動? に関しては各々図2a,図2b のようにX-Y 軸および追跡点を設け,時間経過とともに,頭部が前後もしくは上下にどのくらいの距離動くか図1 シロアリの警報行動を,運動解析ソフトウェアを用いて解析した。