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しろありNo.156

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しろありNo.156

?報 文?琉球大学における私たちのシロアリ研究徳  田     岳 ( 13 )しろあり No. 156, pp.13―18. 2011年7月1. はじめに 日本国内において沖縄は,種類・数のどちらにおいてももっともシロアリが豊富に分布する地域であると言っても良いだろう。シロアリの分布に関する詳細は後で山田によって述べられるが,このような中に琉球大学は立地している。油断すれば実験台すらシロアリの餌食となる琉球大学は,シロアリ研究者にとってはある意味(不謹慎ながら)天国といえるかもしれない(図1)。 琉球大学におけるシロアリ研究の歴史は古く,1950年代から60年代にかけて理学部の故池原貞雄先生(琉球大学第7代学長)によって精力的に分布や生態に関する研究が行われている。その詳細は他の報文1)に譲るが,これらの研究が現在の琉球列島におけるシロアリ研究の礎となったことは間違いない。1970年代になるとシロアリの生態学に関する研究は,新たに琉球大学理工学部に赴任した故安部琢哉先生に引き継がれる。その後安部先生は京都大学に転勤されるが,2000年の事故で亡くなられるまで,日本(世界と言ってもいいかもしれない)におけるシロアリ研究のリーダー的役割を果たされることになる。また,1970年代から90年代はじめまで琉球大学では教養学部(後に理学部へ異動)の屋良和子先生によってシロアリ共生微生物に関する研究が行われた。70年代には農学部の当山清善先生によって,シロアリセルラーゼの研究が行われている。さらにシロアリ防除などに関する応用的な研究が70年代以降,農学部の屋我嗣良先生によって精力的に展開され,さらに90年代以降現在に至るまで同学部の金城一彦先生によってシロアリタケに関する研究が展開されている。 ちなみに,私は2000年3月に琉球大学理学部に着任した。ただ,理学部に在籍していたのはほんの一年半ほどで,現在では熱帯生物圏研究センター(分子生命科学研究施設(図2))という大学内の全国共同利用施設に在籍している(ちなみに,多くのシロアリ研究者が利用されている西表研究施設も熱帯生物圏研究センターの一施設である)。私たちの研究室の内容は後で述べるが,私の着任後も2004年にはシロアリ共生微生物研究に携わっておられる新里尚也先生が遺伝子実験センター(現:熱帯生物圏研究センター)で研究を開始された。さらには沖縄県内で高校教諭をしておられた杉尾幸司先生が2006年に教育学部に着任され,シロアリを用いた教育研究を展開しておられる。このように歴史的に見ても琉図1 琉球大でイエシロアリの被害にあった実験台(上)とその引き出し(下)実験台はほぼ半壊であり,いくつかの引き出しの中はイエシロアリの巣材で埋め尽くされていた。