ブックタイトルしろありNo.156

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しろありNo.156

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概要

しろありNo.156

( 14 )球大学では多くの教員がシロアリに関係した研究に従事してきており,これまでに多くの学生・院生がシロアリに関係する研究を展開して巣立っている。また,本号の後のページを執筆された山田研究員や北條研究員に代表される博士研究員の方々も,琉球大学でそれぞれユニークな研究の足跡を残している。これらの状況から,いかに琉球大学がシロアリとゆかりが深いか理解していただけるだろう。2. 私たちの研究室とシロアリ消化系研究 私たちの研究室は,遺伝子機能解析学分野と呼ばれている。近頃の大学は多くの場合,大講座制を採用していて一教員が一研究室を主宰することが多いが,ここで言う?分野? という言葉は小講座制とよく似たニュアンスを有する。つまり複数の教員でひとつの研究室を運営するような形をとるため,?私の研究室? ではない。私たちの研究室でシロアリを扱っている教員は私だけなので,研究室に所属する学生の研究範囲も幅広い。前述したが,私は2000年から10年あまり琉球大学に在籍している。かつて研究室の教授が植物研究者で私が助手の身分であった頃は,植物の研究を手伝ったり2),果ては深海調査にまで出かけたこともあった3),4)。数年前から新しく着任された研究室の教授は,主にカイコを用いた研究を行っておられるので,研究室としての研究内容は昆虫を研究対象とするという意味ではこの頃少しまとまってきた(ような気がする)。とりあえず,私がこれまでに行ってきたシロアリの消化研究に関する内容についてはちょうど1年前の本誌に紹介させていただいたので,詳しくはそちらをご参照願いたい5)。また,シロアリ消化研究の内容についてもっと詳しく知りたい方はSpringer からシロアリ研究の最近の進展をまとめた本が出版されているので,その第3章を読んでいただきたい6)。 研究室内での独自の研究活動に加えて,最近では昔からの協力関係があった独農業生物資源研究所の渡辺上級研究員の研究室や,理化学研究所の守屋研究員(兼横浜市立大客員准教授),菊地チームリーダー(同客員教授,名古屋大客員教授),東京大学農学部の有岡准教授らとも協力してシロアリ消化系に関する共同研究を進めている。たとえば,かつては大腸菌でのタンパク質生産がうまくいかずに苦労していたシロアリ由来のセルラーゼも,有岡先生たちとの共同研究によって麹菌を用いた大量生産への道筋がついてきた7),8)。この研究自体は,シロアリセルロース消化系を応用してエネルギー利用を目指した効率的な木質分解系を構築しようという試みの一環であるが,最近ではこの麹菌によって生産されたシロアリセルラーゼを利用してさらにシロアリ消化系の謎に迫る基礎研究も行えるようになった(この内容も詳しく述べたいのだが,本稿執筆時はまだ投稿論文改訂中なので内容の詳細は差し控える)9)。これからも,奥深いシロアリ消化系の秘密に迫ってみたいと考えている。3. 研究室メンバーによる最近のシロアリ研究 実はシロアリの木材消化の研究は,あまり学生さんにやらせたことがない。そもそも研究室に入ってくる学生の数が毎年少ないからとか色々言い訳はあるのだが,一番の理由は内容や実験方法を伝えづらいためか,気がつくとなんだか別のテーマの方に興味を示されてしまう,ということのような気がする。噛み砕いて言うと,私の説明能力が未熟であるためであるということになるのかもしれない。そんな中で,現在農業生物資源研究所で博士研究員をしている荒川さんの研究は,私たちの研究室に在籍中にイエシロアリによるヘミセルロース分解に関する研究で学位をとった貴重な例である。簡単に彼の業績をまとめると,彼はイエシロアリから主要なヘミセルロース分解酵素であるキシラナーゼの精製に成功し,部分アミノ酸配列の情報に基づいてキシラナー図2 琉球大学熱帯生物圏研究センター分子生命科学研究施設の外観。建物の裏手にはうっそうとした林があり,コウシュンシロアリがたくさん分布している。