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しろありNo.156

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しろありNo.156

( 23 )いるとも考えられている17)。Reticulitermes 属の兵隊は大顎や額腺分泌物を用いた防衛の他に,頭部全体で巣の出入り口を塞ぐといった侵入防止型の物理的防衛も行っている18)。5.  シロアリ科の防衛方法 地球上で最も繁栄し多様化したグループであるシロアリ科のシロアリは,熱帯域を中心に1,900種ほど分布している19)。温帯気候が国土のほとんどを占める日本にはOdontotermes 属のタイワンシロアリ,Pericapritermes 属のニトベシロアリ,Sinocapritermes属のムシャシロアリ,およびNasutitermes 属のタカサゴシロアリの4属4種のみが分布しており,しかもそのすべてが八重山諸島のみ(タイワンシロアリが沖縄島の一部地域に生息しているのを除いて)に生息している5)。 シロアリ科のシロアリは,兵隊の防衛方法も非常に多様化しており,Odontotermes 属では,発達した大顎でかみつくと同時に,唾液腺からの分泌液を傷口に向けて放出するというかみつき分泌型の防衛を行う(図9)。しかし,Odontotermes 属の兵隊には,ミゾガシラシロアリ科のかみつき分泌型の兵隊で見られる額腺孔は見られない(図10)。Odontotermes 属の兵隊の唾液腺の分泌液はベンゾキノンやタンパク質などである12 ~ 16)。これは敵に対して忌避効果があるようであるが10),詳しくは調べられていない。 シロアリ科の中でも進化したグループであるPericapritermes 属とSinocapritermes 属の兵隊は,左右非対称に発達した大顎を巧みに用いて,敵を弾き飛ばすという?弾き飛ばし型? の物理的防衛を行う(図11)。両属とも,左の大顎が顕著に曲がっているが,その曲がり具合はPericapritermes 属の方が極端である(図12)。Pericapritermes 属では,逆?く? の字型に曲がった左の大顎に右の大顎を巧みに引っ掛けて図10 タイワンシロアリの兵隊頭部。Odontotermes 属(タイワンシロアリ)の大顎は鋭く発達しているが,走査型電子顕微鏡写真(右)でも額腺の分泌孔は確認できない。スケールバーは1㎜。図9 タイワンシロアリの攻撃。濾紙を噛ませたところ。Odontotermes 属(タイワンシロアリ)の兵隊は,大顎で挟むと同時に唾液腺からの分泌液を放出する。濾紙の先端が分泌液で汚れているのがわかる。