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しろありNo.157

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しろありNo.157

?研究トピックス?ヤマトシロアリの幼形生殖虫が幼虫のカースト分化に与える影響林     良  信 ( 12 )しろあり No. 157, pp.12―14. 2012年1月1. はじめに ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)のカースト分化経路は早期二分岐型と呼ばれ,2齢幼虫は3齢に脱皮する際にワーカーかニンフのいずれかに分化する1)(図1)。ヤマトシロアリにおいては各個体がワーカー・ニンフのどちらに分化するかは遺伝的要因の影響を受けて決定されることがこれまでの研究で知られている2)。 また,環境要因がワーカー/ ニンフ分化に影響を与えることも明らかになっている2)。ワーカー型,ニンフ型幼形生殖虫(ニンフ,ワーカーが脱皮をして幼虫の特徴を残したまま繁殖能力を獲得した個体;以下,それぞれnymphoid,ergatoid とする)の単為生殖によって生じた仔虫をワーカーのみの実験用人工コロニーで飼育するとそれらはすべてニンフに分化し,遺伝的にはニンフに分化する運命を持つと考えられる2)。しかし,それらの仔虫を雌雄一対のnymphoid を含む実験用人工コロニーで飼育するとワーカーに分化する個体もみられ,遺伝的要因に加えて“雌雄一対のnymphoid の存在”という環境要因もカースト分化に影響することが明らかになった。 我々は,さらに1個体のergatoid やnymphoid がワーカー/ ニンフ分化に影響するか調べた(Hayashiet al. 未発表)。本稿ではその研究の紹介をする。2. 方   法 Ergatoid またはnymphoid の単為生殖によって生じた仔虫を,? ワーカー50個体(colony W),? ワーカー50個体とメスergatoid(colony ♀E),? ワーカー50個体とオスergatoid(colony ♂E),? ワーカー 50個体とメスnymphoid(colony ♀N),? ワーカー 50個体とオスnymphoid(colony ♂N),? ワーカー50個体と雌雄一対のnymphoid(colony♀ N ♂ N)の6通りの仔虫飼育コロニーで飼育し,仔虫が3齢になったときのカーストを調べることにより幼形生殖虫が仔虫のカースト分化に影響するか調査した(図2)。 実験用人工コロニーを作成するために,水戸市の水戸森林公園でヤマトシロアリのコロニーを2図1 ヤマトシロアリのカースト分化経路の概念図図2 実験の概略図。産卵コロニーで得られた単為生殖によって生じた卵を6通りの仔虫飼育コロニーで飼育した。E:ワーカー型幼形生殖虫(ergatoid),N:ニンフ型幼形生殖虫(nymphoid),W:ワーカー。Colony Wは50個体のワーカー,colony ♀Eは1個体のメスergatoid と50個体のワーカー,colony ♂Eは1個体のオスergatiod と50個体のワーカー,colony♀Nは1個体のメスnymphoid と50個体のワーカー,colony ♂Nは1個体のオスnymphoid と50個体のワーカー,colony ♀N♂Nは雌雄一対のnymphoid と50個体のワーカーを含む。