ブックタイトルしろありNo.158

ページ
39/50

このページは しろありNo.158 の電子ブックに掲載されている39ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

しろありNo.158

ブックを読む

Flash版でブックを開く

概要

しろありNo.158

( 36 )Osbrink et al. 2008)。単一家族コロニーと複合家族コロニーの何れのコロニーも氾濫を生き残った。洪水による水没の間,コロニーの発育システムは,コロニーの生き残りに及ぼす影響を見いださなかった。 コロニーの発育様式と生き残りの間に相関関係が見いだせない点について,次の処理に注目している(Husseneder et al. 2007)。複合家族のコロニーが分巣に住んでいる複数の生殖虫の番(つがい)がいることが洪水を耐えぬくより高い可能性を示すならば,洪水の後で研究サイトで観察される単一家族のコロニーのパーセンテージの減少があるべきである。単一家族から複合家族へコロニーの移行は洪水の影響が必ずしも考えられるというわけではないが,しかし,一次生殖虫が洪水によって死亡した場合にはあり得るべきことである。この移行は一次生殖虫がそのコロニーの中で副生殖虫に交代するか,副生殖虫が補充されたことによるコロニーのライフサイクルの変遷である(Thorne et al. 1999)。当然のことながらニューオーリンズ市のシロアリ生息地において以前からこの移行については観察されていた(Aluko and Husseneder 2007)。 イエシロアリの原産地である中国南東部は,モンスーンにより干ばつと洪水の季節に遭遇している(Kripalani and Kulkarni 1997)。これらの環境に生息するシロアリのコロニーは,洪水の季節にもかかわらず,生き残っている。従って,イエシロアリが世界の各地で洪水に遭遇しても生き残ることができたのも不思議なことではない。 他の社会性昆虫種の洪水の期間の行動に関しては,実証済みであるが,氾濫の間のイエシロアリの生き残りメカニズムは,十分理解されてはいない。たとえば,膜翅目もいくつかのアリの種は洪水の期間の生き残りメカニズムについては実証済みである。アリの一種であるCrematogaster cerasi(フィッチ)のコロニーは,上昇してくる水から逃れるために,垂直に移動して洪水を生き残る(Ellis et. al2001)。 もう一つの種であるCamponotus anderseni マッカーサとシャタックのコロニーは,巣の入口の孔を塞いで水が浸入するのを阻止する(Nielsen et al.2006))。 マングローブ マッドネスティング アリ(Polyrhachis sokolovaForel)は洪水が退くまで巣室の中のエア・ポケットの中に潜んでいる(Nielsen1997)。 赤トフシアリの仲間のSolenopsis invictaBuren のコロニーは,洪水の間,彼らの体を結び付けて筏(いかだ)を作って乗り切る。水位が退くまで,コロニーとして水面に浮かぶ,あるいは,アリ自体が喫水線より上に水面に接しながら浮かんでいる(Andersonet al. 2002)。 アリの洪水の期間のこれらの行動の規範は地下生息シロアリに当てはまると仮定することができない。しかし,高度に進化した社会性昆虫であるイエシロアリが洪水の期間を生き抜くために彼ら自身の行動のやり方を開発したかもしれない。洪水の後でパンアメリカンスタジアムの樹木から採取したイエシロアリは地中設置型モニタリング・ステーションを占拠しているコロニーとは別のものであった。 樹木から採取したイエシロアリは喫水線より上の安全な場所へ避難して洪水を生き残り,樹木の周囲の地上設置型モニタリング・ステーションを占拠しているイエシロアリではなかった。しかし,建物の中の喫水線より上で採餌行動をしているイエシロアリは氾濫前と後に地中設置型モニタリング・ステーションの中で採餌行動しているコロニーの1つに属していた。そのコロニーは,氾濫の間,より高い位置へ逃れ,この保護された場所の中に残ることによって,洪水を生き残ったかもしれない。 室内生物検定では迫り来る水を逃れるために,イエシロアリが木材の空隙の中を垂直に移動した(Cornelius and Osbrink 2010)。洪水で水中にあった地上設置型モニタリング・ステーションを観察することもイエシロアリを採取することもできなかったので,イエシロアリが洪水の期間この行動のメカニズムによって生き残ったかどうかは解っていない。イエシロアリの職蟻が水の中に16時間以上長く生き残ることができないことは実証されている((Forschler and Henderson 1995 Forschler1995),また,洪水の間にイエシロアリが彼らの蟻道や坑道を空にしている証拠はない(Cornelius and Osbrink 2010)。しかし,イエシロアリは樹幹の中に造り,水から隔離された巣の中で洪水で冠水の期間を生き残ることができることが示唆されている。これはイエシロアリの巣を構築している段ボール紙様の材料の疎水性