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しろありNo.160

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しろありNo.160

14 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 3 . 7 N o . 1 6 0報 文Reports気密性能測定値で比較するトビイロケアリが侵入した高気密高断熱家屋と非侵入家屋株式会社 青山プリザーブ 青山 達哉1. 北海道のトビイロケアリ トビイロケアリ(写真1)は以前の学名がLasiusnigerとされていて欧州にも広く分布して家屋侵入する種であったが, L. japonicus Santschiとなった現在, わが国では北海道からトカラ列島まで分布し, 平野部から山地の草地から林内で普通に見られる種で, 土中や朽木中に営巣するとされている1)。しかし, 都市でも珍しくはない種で, 札幌市保健所2005年のアリ相談件数は91件, そのほとんどが6月から8月に集中していた2)。この期間はトビイロケアリのスオーム時期であり, 札幌におけるヤマトシロアリReticulitermes speratus(Kolbe)のスオームと一時期重なり, その上外壁基礎面にシロアリ蟻道に似た土莢(写真2)がしばしば見られるために, 市民が家屋被害への懸念を抱くことがある。特に20年以上経過した木造家屋は水周りや外壁劣化部分に掘削された木部が散見される3)ことから, 過去にシロアリに匹敵する被害を及ぼすとの報告があったが, これは観察情報不足よるミスであって, 本種に健全木を掘削する能力は無く, 柔軟な腐朽部分に坑道を掘るか, シロアリ食害跡を乗っ取るだけである4)。トビイロケアリは樹木や草に寄生するアブラムシから甘露を採餌する(写真3)ことから, 家屋侵入は単なる甘味を求めて5)とする記載があるが, 青山らは6)北海道で見られた多くの事例は家屋そのものに侵入要因があるとの考えから, 防除した家屋調査資料をまとめた。その結果, トビイロケアリは築後20年以上経過した家屋の腐朽木材に営巣するが, 一方では新築経過5年以内にも多くの家屋侵入がある。築後間もない家屋への侵入要因に劣化との関連は無いとし, トビイロケアリの家屋侵入が気密と断熱性能向上の為の構造と資材が関わっていると推定した。写真1 トビイロケアリ職蟻と幼虫写真3 樹上でアブラムシから甘露を採餌写真2 トビイロケアリの土莢