ブックタイトルしろありNo.160

ページ
21/52

このページは しろありNo.160 の電子ブックに掲載されている21ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

しろありNo.160

ブックを読む

Flash版でブックを開く

概要

しろありNo.160

18 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 3 . 7 N o . 1 6 0トグラムを図3と図4に, 双方の比較を表1に示した。侵入家屋の相当隙間面積(? /㎡)の最小値は0.25, 最大値0.66, 平均値0.48, 標準偏差0.13であった。他方の非侵入家屋では, 最小値0.13, 最大値1.49, 平均値0.44,標準偏差0.20であった。両者はともに気密性能次世代住宅評価基準スタンダードレベルとして制定された1.0 ? /㎡以下を十分に満たす高気密家屋であったことが判明した。しかも侵入家屋25件のうち13件が札幌市の基準である暖房無用のトップレベルに該当する超高気密家屋であったことが驚きに値する。 これら得られた相当隙間面積の値をχ2検定で比較したところ, 侵入家屋と非侵入家屋では有意な違いはみられなかった (χ2=68.5, df=79, p=0.79)。以上のことから, 今回の気密性能値を調査した外側断熱木造家屋へのトビイロケアリの侵入は, 侵入しなかった家屋より気密性能が劣るとは云い難いことが明らかとなった。この結果が近年の北海道の木造建築にすべて当てはまるかどうかは今後の課題であるが, そもそもごく一部の建築主がアリが出るから隙間が多い家屋を建てたとするクレームそのものが何の裏付けも無いことであるし, 本調査の範囲内で見る限り, その懸念は払拭された感があるように思われた。5. トビイロケアリの建材選好性での侵入原因考察 林ら3)はアリの出現は20年以上経過した家屋の劣化兆候の1つであるとした。調査地が札幌市内なのでアリの種類はトビイロケアリであったと思われる。青山ら6)のトビイロケアリ防除家屋72件の調査によると築後年数21年以上が27.8%で, そのほとんどに劣化兆候が見られたので, 林ら3)の報告を裏付けた。しかし, 最多は30.5%の築後5年以内で, しかもそのほとんどは築後1年以内であった。これらの違いは前者の外壁はモルタルで断熱材が不充分なのに対して, 後者の壁はサイディングで充分な断熱され, その56%に外基礎断熱が施されているなどの高気密高断熱化が進んだ構造であった。そこで, 青山10)は建材に対するトビイロケアリの選好性を実験したところ, トドマツ材の新材3.6% , 古材55.0% , ナミダタケ腐朽材1.3%の結果を得て, 意外にも腐朽材へ好んで家屋侵入するのではなく,木材が古くなることがトビイロケアリ侵入要因の1つとなり, 新材には好んで近寄らないことが判明した。防除家屋の断熱材を掘削する現場が散見され, また,英国において住宅に侵入する生物に関するガイドブック11)には L. niger が建物の隙間から侵入して断熱材に営巣すると記載されていることから, 選好性実験に断熱材用いたところ, ウレタン26.2% , ポリスチレン33.3% , グラスウール12.0%の結果が得られ, 発砲断熱材への選好性が高い傾向にあった。したがって, 築後20年以上の木造家屋は木材の古材化, 築後間もない家屋は断熱材に侵入要因があると考えられた。これを防ぐには断熱材の接合部に隙間を作らないように, テーピングするなどの処置が有効と考えられた。築後新しい家屋にトビイロケアリが侵入して, もし放置しておいたならば, 写真9のような発砲断熱材に坑道を掘削されて, 断熱効果が減少するのではなろうかと思う。食害するわけではないが, 粒子にして多量に搬出し,捨てられるので早めの防除処置を薦めたい。写真7 モルタル壁下地材の腐朽部分に営巣写真8 外基礎の断熱材に営巣(ドライバーで掘削)