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しろありNo.160

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概要

しろありNo.160

22 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 3 . 7 N o . 1 6 0 一階と二階の境界部にある積層梁(厚さ15㎝ , 幅60㎝のカラマツ集成材の3枚重ね)については, E6 ?E10及びE1 ?B1を点検対象とした。これらは事前情報及び当日の一次診断により, 詳細点検の必要性が高いと見込まれた箇所である。作業は主に屋外から実施したが, 一部の箇所は室内側・床下側からも実施した。以上の点検箇所の設定によって, 腐朽や蟻害など生物劣化の危険性の高い部位はほぼ網羅できたと考えられる。5.点検の内容及び方法 この報告書では, 建物に悪影響を与える包括的事象(排水溝の詰まり, 土間コンの亀裂などを含む)に対しては「点検」という用語を用い, 部材劣化に直接的に関わる限定的事象に対しては「診断」という用語を用いる。5.1 一次診断 1)視診:目視によって建物の変形や傾き, 集成材の接着剥離や干割れ, 腐朽や蟻害の兆候, 接合部のズレや間隙, 接合金具の錆, 基礎コンクリートの亀裂の有無等を観察した。2)触診と打診:手の届く範囲の木部は, 手指で押して変形の有無を確認するとともに, テストハンマーによる打診を実施した。道具は写真3に示した。5.2 二次診断(機器を用いた定量的な点検)1) 衝撃的な貫入に対する抵抗値を用いた診断(通称:ピロディン診断) 直径約3㎜の鋼製ピンを一定の衝撃力で木材に打ち込み, 貫入深さを測定する診断技術である。木材が劣化すると強度が低下するので, 劣化レベルが増すにつれ貫入値が大きくなる。すなわち, 貫入値は木材表層部の残存強度を知る目安になる。 今回, 用いた機種はピロディン6J(スイス, proceq社製)である(写真3)。カラマツ集成材の場合, 劣化していない健全材の貫入深さは12 ?16(まれに18)㎜であるので, それより大きな値を示せば「劣化している」と判断した。ただし, 測定範囲は表面から最大40㎜であり, それより深い位置の診断はできない。今回の診断では, 柱の基部付近(コンクリートベースから上方約3㎝)を中心にデータを採取した。2) 穿孔抵抗値を用いた木材内部の劣化診断(通称:レジストグラフ診断) 穿孔抵抗式診断は, 細い錐で木材に孔をあけながら内部に進行し, 刃先に発生するトルクをモニターする診断法であり, 強度が低下している部分の位置, 劣化レベル, 劣化範囲を知ることができる。使用機器は, ドイツIML社のレジストグラフF300である(写真3)。なお, 測定結果を示す図面は, X軸方向に表面からの深さ(距離), 進行方向は右から左, 上向きのY軸方向に穿孔抵抗値が表示されるようになっている。X軸の目盛は1マスが1㎝に相当する。 診断作業は, 原則としてコンクリート基礎に近い柱脚部を屋外から屋内に向けて実施した。今回の建物の集成材はカラマツを用いており, 年輪構造にもとづく密度差が穿孔抵抗値に直ちに反映されるので, 抵抗値曲線は健全な木材であっても上下に大きくばらつく。しかし, 腐朽・蟻害を生じると穿孔抵抗値がゼロに近づくので曲線はベースライン付近を走行することになる。したがって, ベースライン付近を走行する部位は「劣化部」と見做した。そして, (劣化部の距離)/(測定距離)×100を計算し, これを欠損率とした。欠損率をもとに劣化レベルは, 次のように設定した。・欠損率が3%未満の時: 劣化レベルは「ほぼ健全」・欠損率が3%以上10%未満の時:劣化レベルは「小」・欠損率が10%以上20%未満の時:劣化レベルは「中」・欠損率が20%以上50%未満の時:劣化レベルは「大」・欠損率が50%以上の時:劣化レベルは「甚大」 写真3 診断に使用した機器