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しろありNo.160

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しろありNo.160

Termi te Journal 2013.7 No.160 33目標を掲げていることもあり,どうしても自国の削減量確保のために不利にならないようなルールを定めたいと考える。海を越えて貿易される木材中の炭素が,その木材を産出した輸出国のものになるか,それともその木材を一定期間利用する輸入国のものになるかで計算は大きく異なる。この議論が収束しなかったため,第一約束期間中は暫定的に木材を即時排出として取り扱い,第二約束期間に向けて検討を続けることとなったようである。 ルール上は木材中の炭素は報告しなくてよいこととなったが,このルールの決定を受けてIPCCが2006年に出したガイドライン2)では,木材炭素を計算する手法として次期以降の約束期間に向けて以下の3つの考え方が提案された(図1)。国内森林木材生産輸入輸出木材利用国内森林木材生産輸入輸出木材利用国内森林木材生産輸入輸出木材利用光合成呼吸,分解等分解/焼却等図1  各手法における計上対象上: 蓄積変化法(国内にある国産材・輸入材を計上),中:生産法(国内外にある国産材を計上),下:大気フロー法(大気とのやり取りを計上)     :国境,      :計上対象【蓄積変化法(ストックチェンジアプローチ)】国内にある木材の増減を計算し,増えたら吸収,減ったら排出とする。国内にある全木材を対象とするため,輸入された木材中の炭素は輸入国が自国の計算に含めることになる。【生産法(プロダクションアプローチ)】国内にある自国の森林から産出された木材および自国の森林から産出されて輸出された木材の増減を計算し,増えたら吸収,減ったら排出とする。輸入された木材中の炭素は輸出国が自国の計算に含めることになる。【大気フロー法(アトモスフェリックフローアプローチ)】大気とのやり取りを計算する。国内で使用している木材が廃棄され,燃されたり腐朽したりした場合に,その分だけ排出となる。 この3つの手法と第一約束期間に採用された暫定法(デフォルトアプローチ,木材は報告の対象としないという方法)をベースとして第二約束期間に向けてどの手法を統一ルールとするかという検討が長年行われ,その結果として生産法に近い手法が採択された。これについては後述の3.1項で詳細を述べる。2.3 IPCC2006年ガイドラインに基づく試算 まだ第二約束期間のルールが検討中であった当時,どの手法が採択されても迅速に我が国の木材利用による炭素収支を計算できる方法を確立することが求められていた。また第二約束期間に向けて,どのぐらいの炭素吸収を見込むことができるかという予測も必要とされていた。このような背景から(独)森林総合研究所は農林水産技術会議プロジェクト「森林・林業・木材産業分野における温暖化防止機能の計測・評価手法の開発」「地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和及び適応技術の開発」や,環境省プロジェクト「京都議定書吸収源としての森林機能評価に関する研究」などを推進し,IPCCが提案する3つの手法により炭素収支を計算できるモデルを開発した3)。 わが国で使用される木材はそのほとんど(60 ?70%)が建築向けに利用されており,続いて家具,梱包材,土木向けなどが多い。また紙も報告上木製品の一種であり,非常に多くの量が社会利用されている。このうち製品寿命の長い建築および家具,製品寿命は短いものの量が膨大である紙の3部門を木材利用モデルの対象とした。 求めたいのは木製品のストック量(社会で利用されている存在量)とその毎年の変化量である。ストック