ブックタイトルしろありNo.160

ページ
38/52

このページは しろありNo.160 の電子ブックに掲載されている38ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

しろありNo.160

ブックを読む

Flash版でブックを開く

概要

しろありNo.160

Termi te Journal 2013.7 No.160 3502550751000 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100残存率(%)年半減期35年半減期25年半減期5年頃に建てられた建築物の多くが寿命を迎えて廃棄されていくためである。それに対して木材利用を振興していくと(図3下,シナリオ2),蓄積変化法,生産法では吸収量を得ることができ,大気フロー法でも排出量が改善される効果があることが分かる。今後人口の減少とともに木材利用も全体として減少傾向となっていく可能性があるが,積極的に木材を活用することが吸収量の確保のために重要であるといえる。3.第二約束期間における木材製品中の炭素の取り扱い3.1 ダーバン合意 2011年の11月末?12月に南アフリカのダーバンで行われた国連気候変動枠組条約第17回締約国会議/京都議定書7回締約国会合(COP17/CMP7)において第二約束期間を2013年から開始すること,またその第二約束期間中に木材製品中に貯蔵されている炭素を各国からの吸収量・排出量の報告値に含めることが合意・決議された。決議文は全てインターネットから5か国語で参照可能であり,森林や木材に関係する決議文は2/CMP.7という文章番号がついている4)。以下決議文2/CMP.7より木材製品に関係する部分を紹介する(決議文の抄訳は筆者,意訳している部分もある)。 まず「第二約束期間以前に伐採された伐採木材製品(Harvested Wood Products:気候変動枠組条約や京都議定書の関係では木材製品はこのように呼ばれている)に由来する第二約束期間中の排出は計上されなくてはならない」ことが宣言されている。木材関係者には画期的な決定であり,当時「ついに決まったんだ!」と思ったのを覚えている。次に大きな決定であるといえるのが「議定書締約国は第3条3項ならびに4項の下で報告されている森林から伐出された伐採木材製品を計上する。輸入された伐採木材製品は輸入国が計上してはならない」という部分である。京都議定書第3条3項,4項の下で報告されている森林というのは簡単に言うと国内にあって人の手が入っている森林のことである。つまりこの部分はIPCC2006年ガイドラインに示された3手法のうち各国が国産材のみを計上の対象とする「生産法」に近い手法が採択されたこと,かつ人の手によって適切に管理されている森林から伐出された木材のみ計上して良いということを示している。これにより森林と木材を切り離して考えるのではなく,一体のものとして温暖化対策を進める重要性が強調されているように個人的に感じている。 またこの決議文は具体的な数値や計算方法が挙げられているのが特徴で「紙は半減期5年,木質パネルは半減期25年,製材は半減期35年として一次減衰関数を用いて計算する」と書かれている部分がある。また「透明かつ検証可能なデータを持つ国の場合は前述の半減期を国独自の値に置き換えることができる。また紙,木質パネル,製材について(半減期を使わない)国独自の方法を使って計算することもできる」とも書かれている。重要なのはここで「伐採木材製品=製材,木質パネル,紙」との定義がなされたことであり,この製品カテゴリーに入らない木材製品は計上してはいけないことになる。これらの製品について,製造された年から単調に減少していくという仮定を置いて計算をするということが書かれているが,これは各国とも廃棄量が得られる統計があまり整備されていないので廃棄量は関数を使って計算で求める推計値を使うということである(2.3参照)。この関数はすでに2006年のガイドラインに登場しており,図4に示すように関数が描く曲線の形は半減期(投入された量が徐々に廃棄されていき,初期の量の半分になるまでにかかる時間)で決まる。例えば紙の場合には製造されて利用に投入された年から5年間で残存率が50%となるように急激に減少していく形となる。 このように一次製品ごとに半減期が定められていることで多くの国がこの決定にしたがって計算ができるという長所がある反面,推計の精度はあまり期待できないといえる。例えば同じ製材でも用途によって寿命は異なるだろうし,国によっても例えば建築物に使われた製材の寿命は大きく異なるであろう。それを一律に半減期35年として計算するので,この方法では非常に大雑把な推計値しか得ることができない。そこで,もし信頼に足る自国独自のデータがあれば半減期を置図4  廃棄量(残存量)を求めるための関数が描く曲線半減期が決まれば曲線の形が決まるような関数がIPCC2006年ガイドラインにて提案されており,第二約束期間も引き続き使用されると考えられる。