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しろありNo.160

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概要

しろありNo.160

Termi te Journal 2013.7 No.160 1報 文Repor ts1.はじめに 木造建築物を蟻害や腐朽から護り, その耐久性を向上するための方法として, これまで建築時や維持管理の場において, 防蟻や防腐薬剤を用いる方法が開発され, 一般化してきた。しかし近年では, これらの薬剤の人体や環境への影響に対する懸念から, 薬剤を使用しない方法への転換が求められつつある。 化学薬剤などによる予防的手段に依存せず, 長期にわたり木造建築物をシロアリの食害から護るためには, これを初期段階で発見し, 早期に処置することが必要となる。しかしシロアリによる食害は, 部材や壁等の構造体の内部で密かに進行し, 目視検査では検出が困難であるため, その検出には非破壊的な手段が必要となる。 木材のシロアリ食害(職蟻の摂食活動による被害)を非破壊的に検出する手法は, 比較的古くより検討され, 既にいくつかの方法が提案されている。その内, シロアリの摂食活動に伴って発生する微弱な弾性波をアコースティック・エミッション(AE)として検出する手法は, 初期段階の食害も検出できるが, 多くの部材から構成される木造建築物に適用するためには, AEの効率的な検出法の開発が課題である。また, 訓練された犬はシロアリコロニーから発生するにおいを精度よく判別できるが, 犬の訓練には多大な費用と時間がかかるため, 犬に代わるガス検出法の開発が強く望ま木造建築物におけるシロアリ食害の非破壊検出のためのアコースティック・エミッションおよびガスモニタリング法の開発京都大学大学院農学研究科 簗瀬 佳之れている。このような背景から, シロアリの摂食活動で発生するAEの木造建築部材における効率的な検出と, シロアリの代謝ガスの半導体式ガスセンサによる検出について検討した一連の研究成果を紹介する。2. AEセンサとしてのポリフッ化ビニリデンフィルムの利用 従来使用されているAEセンサは, 圧電素子ジルコン酸チタン酸鉛(以下PZTと略す。)を円筒形のケースで覆っているため, 高さ22 ?40mm, 直径8 ?12mmという大きさである。そのため取り付け位置が制限されること, また曲面などへの取り付けも困難になることから, このセンサに代わる新しいAEセンサの開発を試みる必要性がある。そこで圧電性高分子ポリフッ化ビニリデン(以下PVDFと略す。)フィルムに着目し,そのAE検出特性について検討した。一軸延伸処理されたPVDFフィルムは厚さ40μmで非常薄いため, 曲面や隙間などにも取り付けることが可能である(写真1)。またカッターナイフなどを使って自由に形状を加工することができるため, 取り付け位置の制限がAEセンサよりも小さくなる。PVDFフィルムのAEセンサとしての特性を明らかにするため, 疑似AE(シャープペンシル芯の圧折)およびシロアリ食害活動をAE源としたときの信号出力を測定し, 通常のPZTセンサと比較した。その結果, 木材試料の繊維方向とAE波の伝搬写真1  PVDFフィルムと従来型AEセンサ(PZT圧電素子) 図1  PVDFフィルムの面積と検出疑似AEの平均振幅の関係従来のセンサフィルム圧電素子写真 フィルムと従来型センサ( 圧電素子)ガス注入口写真 半導体式ガスアナライザフィルムの面積平均振幅図 フィルムの面積と検出疑似の平均振幅の関係