ブックタイトルしろありNo.161

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概要

しろありNo.161

20 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 4 . 1 N o . 1 6 1査によりイエシロアリの営巣が判明し, 東京都による駆除作業が実施されたことにより減少した可能性がある。なお, 元地集落への有翅虫の飛来元(営巣地点)が蝙蝠谷であるかは不明である。5.3  2 ヶ年の調査結果からみた母島における分布域の検討 2ヶ年の調査結果から推測される母島における分布域は下記のとおりである。また, 2ヶ年の調査結果を重ねたものが図2である。① 母島のイエシロアリの分布域は大きく2つあると推測される。1つは長浜トンネルを含む北部である。もう1つは南部の元地集落からフルーツランドを含む箇所である。北部及び南部に位置する2つの分布域のかたまりが推測できたが, 分布域の解明については, 本研究の調査成果では不十分である。② 母島北部については2ヵ年に渡って有翅虫が確認され, イエシロアリが安定的に生息していると推測される。なお, 2011年においては島北部の東山や大沢歩道など山域でも調査を実施し, 高い頻度で確認していることから, これ以外の山域についても分布している可能性が高い。林野庁小笠原地域森林生態系保全センターの調査によると, 母島北部の石門地域において, 2012年, 2013年ともイエシロアリの有翅虫がライトトラップによって捕捉されており(保全センターからの聞き取り), 北部の山域への分布は確実なものとなった。③ 南部についても, 2012年も2011年と同様に有翅虫が確認されたが, 2011年よりも確認地点数が減った。これは, 営巣が確認された蝙蝠谷で巣の駆除作業が実施されたこと, 南部での調査地点数自体を減らしたことのほか, ランタンの照度を下げたことなどが影響したと思われる。④ 島中央部では, これまでの調査では有翅虫の確認が無く, 北部と南部の間で1,500mであるが確認されていない空白域(幅)が存在した。しかし, 実際に南北に分断された分布となっているかどうかは不明である。 2012年に蝙蝠谷において, 小笠原村の駆除事業によりイエシロアリが確認された。これ以降, 東京都による駆除事業が行われ1巣が摘出されたが, 2013年においてもスオームの発生があったという(東京都聞き取り)。 蝙蝠谷は工事用資材の仮置き場であることから, 母島北部からイエシロアリが付着した木材を持ち込んだことによって侵入したと言われている。また, 現在, 南部での確認は蝙蝠谷だけとなっているが, 南部の分布箇所が蝙蝠谷に限定されるかについては疑問が残っている。 1983年時点で集落部においてイエシロアリが確認されたが, その後1992年からの一連の調査においては確認されなかった。しかし, 1983年当時において, 複数個所で侵入定着し, 被害を発生させていたイエシロアリ個体群がその後, 消滅したとは考えにくい。事実, 1991年の母島北部の侵入個体群は, 侵入箇所の長浜トンネル一帯で駆除作業が行なわれていたにもかかわらず, 北部で分布を拡大している。南部においては特段の駆除作業が実施されていないことからも, この個体群が生息し続けていた可能性は否定できないと考える。6.おわりに  本研究の開始当初は, 母島におけるイエシロアリの分布は, 「北部地域の道沿いに限定して分布しているらしい」といった不確実な情報しかない状況であった。本研究により, 母島北部地域においては当初の情報よ図2 2 011 年・2012 年のイエシロアリの有翅虫調査結果りも広範囲に分布していること, そして, 集落を含む