ブックタイトルしろありNo.161

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概要

しろありNo.161

28 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 4 . 1 N o . 1 6 1【保証満了日からの経過年数別蟻害発生率】 図7にA区分データにおける保証満了日からの経過年数別蟻害発生率を示した。 蟻害は保証期限, すなわち薬剤効力の有効期限が切れた翌年から発生し始めているが, その発生率は保証満了からの経過年数が長くなるにつれて急増していくことが分かる。保証満了以後10年も経過すれば, 被害発生率は20%近くに達し, さらに10年経過後には30%近くに達している。蟻害の再発防止には, 5年ごとの再処理が求められる。図7  A区分データにおける保証満了日からの経過年数別蟻害 発生率0% 20% 40% 60% 80% 100%保証満了日からの経過年数別被害発生率(%)保証満了日からの経過年数(年)02468101214161820222426283032343638404244まとめ① 本調査では, 消費者や事業者のニーズが高い木造戸建て住宅におけるシロアリ被害の保険対象化を図るために必要となるデータの収集・分析を行うこと目的に, 全国を対象とした蟻害・腐朽実態を調査し, 被害や腐朽の発生状況や防蟻防腐措置が蟻害・腐朽発生に与える影響などについて整理, 分析を行った。② 今回の調査からも改めて分かったことであるが, シロアリ被害発生率は既往の調査1)でも明らかなように, 昭和30年代, 40年代に比べれば低くなっているものの, ごくまれに発生するというような被害率では依然としてない。工法, 基礎構造, 防除処理時期など条件を絞れば被害率が数%という数値に抑えることも可能であろうが, 多くは防除処理の保証期限が切れてから数年の内に再発被害を受けてしまうのが実態である。長期優良住宅にせよそうでないにせよ,専門家による定期の床下点検を充実させるとともに,再処理を含めたメンテナンスを適切な時期に実施することが被害の再発を防ぐ上で最も重要な条件になると思われる。③ また, 地域性について言えば, 今回の調査は北海道,北東北の一部が対象となっていないが, これらの地域でも既往の調査などではシロアリ被害が一定の割合で発生していることが報告されている2)。品確法劣化軽減等級3や2などではこれらの地域のシロアリに対する地盤対策が免除されているが, 今後再検討する必要があると考える。 今後, 本調査で得られた知見をもとに, 工法や築年数, 各部構造などによる蟻害や腐朽のリスク評価が実施され, 中古住宅流通の促進に少しでも寄与できるところがあれば幸いである。 なお, 本調査を実施するにあたり計画段階, 中間報告, 最終分析と全期間に亘り関東学院大学の中島先生に監修頂きました。厚く御礼申し上げます。参考文献1) 中島正夫(2002): 全国の住宅建築を対象としたしろあり被害アンケート調査, 日本建築学会大会講演梗概集, pp.409.2) 大村和香子ほか(2013): 各シロアリ種の野外分布北限と気象因子との関係, 木造長期優良住宅の総合的検証事業耐久性分科会報告書, (社)日本木材保存協会, pp.7.