ブックタイトルしろありNo.162

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概要

しろありNo.162

Termi te Journal 2014.7 No.162 21報 文Reportsイエシロアリ有翅虫群飛調査における紫外線LEDランタンの検証について小笠原村建設水道課 松谷 諭1. 小笠原諸島とシロアリ 小笠原諸島は, 東京から約1,000km南にある30あまりの島々の総称で, 気候は亜熱帯海洋性気候に属し,年間平均気温は23℃ , 冬季でも18℃で, 四季温暖多湿である。年間降水量は約1,300mmと東京よりやや少なめで, 父島(約2,000人)と母島(約450人)のみに一般住民が居住している。また, 一度も大陸とつながったことがない海洋島であることから, 多くの固有動植物が独自の進化を遂げながら生息・生育し, その進化は今なお進行しており, その類まれなる価値が認められ, 平成23年6月24日に国内4番目となる世界自然遺産として登録された。 小笠原諸島で発見・報告されているシロアリは, イエシロアリ, ヤマトシロアリ, ダイコクシロアリ, カタンシロアリ, ナカジマシロアリの5種類で, 1)特に加害の激しいイエシロアリは, アメリカ統治時代に米軍の物資に紛れて父島へ侵入したと言われている。2)父島のイエシロアリは, 全島的に生息密度が高く, 家屋への被害が著しいことから, 平成4年以降, 「人とシロアリの住み分け」方針により小笠原村が行政レベルでシロアリ対策を講じており, 居住地区についてはイエシロアリ有翅虫群飛数が減少するなど, 継続的に実施してきたシロアリ対策事業に一定の成果が認められている。1) 母島では, 平成10年に居住地区から離れた長浜トンネル周辺(平成3年完成)でイエシロアリによる被害が確認された。1)居住地区方面へ生息域を拡大させないよう営巣探査・駆除を継続的に実施して生息数を減少させ, 最終的には根絶を目指してシロアリ対策を講じている。1)2. 群飛調査の目的 小笠原村が実施しているシロアリ対策事業は, 環境への負荷を最小限に抑えるため営巣探査により営巣を直接摘出し, 必要最小限の薬剤による駆除を基本として実施している。営巣探査を行う前に群飛調査や被害調査を行うことにより, 営巣箇所をある程度特定することが可能となり, 効率的な駆除作業につなげることができる。 本検証は, 営巣探査のもととなる群飛調査の精度を高めるため, 虫の視感度が高い紫外線領域波長のLEDランタンと従来の白色LEDランタンの補虫性能を比較し, イエシロアリ有翅虫群飛調査における使用機材としての優位性を確認することを目的に実施した。平成25年にも同様の検証を行ったが, 野鳥によるイエシロアリ有翅虫の捕食があったため, 防止策を講じたうえで, より正確なデータにより比較検証を実施する。3. 調査方法3.1 調査実施場所 調査は, 扇浦交流センター(東京都小笠原村父島字扇浦)において実施した。3.2 LEDランタン 調査に用いたLEDランタンは以下の2種類である。なお, 今回使用したLEDランタンの波長特性は独立行政法人森林総合研究所協力のもと測定した。1) 紫外線LED(3灯)(Y社製, 写真1)(ピーク波長:375nm):白色LEDを改造〔基盤から白色LEDを取外し, 紫外線LED(N社製)を取付け〕)2) 白色LED(9灯)(Y社製, 写真2)(ピーク波長:450nm)写真1 紫外線LED 写真2 白色LED