ブックタイトルしろありNo.162

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概要

しろありNo.162

22 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 4 . 7 N o . 1 6 23.3 調査手順 調査は以下の手順で実施した,1) 5mの間隔を空けて高さ43cmの台を設置し, その上に直径42cmの補虫用深皿トレーを置いた。このトレーに水を入れ, 中心部にレンガを置いて,紫外線LEDランタンと白色LEDランタンを設置した(写真3)。2) 群飛が始まる18時00分頃にランタンを点灯し, 紫外線カットゴーグルを装着して群飛状況を観察した。3) 群飛終了後, ランタンを消灯し撤去した。また, 捕虫用深皿トレーからブロックを撤去し, 野鳥によるイエシロアリ有翅虫の捕食を防ぐために蓋用浅皿トレーを被せてから, 重しとして再度ブロックを設置した。4)翌朝, 補虫結果を集計し, 比較検証を行った。4. 結果4.1 LEDランタンの波長特性 図1に, 本調査に使用した2種ランタンの波長特性(実測値)を示す。このスペクトルから紫外線LED(3灯)ランタンのピーク波長は375nm, 白色LED(9灯)ランタンのピーク波長は450nmであった。白色系LEDランタンの光には波長420nm以下の青色?紫外線成分がないのに対して、紫外線LEDランタンの光には波長420nm以上の可視光領域がないことが確認された。写真3 ランタンの捕獲容器へのセット図1 調査に用いた2種ランタンの波長特性(実測値)4.2 補虫結果 群飛4回分の補虫結果(補虫数・補虫比率)を表1にまとめて示す。群飛規模により補虫数の増減はあるが, 全てにおいて紫外線LEDランタンの補虫数が多く,白色LEDランタンと比較して, 約1.5, 4.8, 5.7, 3.9倍の補虫性能が確認された。5. 考察 平成25年も群飛4回分の補虫結果による同様の検証を実施しており, 紫外線LEDランタンが優位となる2.8,2.2, 2.2, 2.7倍の補虫性能が確認されていたが, 野鳥によるイエシロアリ有翅虫の捕食があり正確なデータが得られなかったため再検証を実施したものである。今回, 蓋用浅皿トレーが強風で飛び, 前夜に約300匹確認していたイエシロアリ有翅虫が全て野鳥に捕食されるアクシデントがあり, 野鳥によるイエシロアリ有翅虫の捕食が補虫結果に影響を与えることを再認識した。検証実施にあたり, ピーク波長375nmの紫外線LEDランタンは眩しさを感じにくいことから長時間直視してしまうことがあり, 安全対策として紫外線カットゴーグルを装着して作業を行った。 「4.2 補虫結果」より, 紫外線LEDランタンは, 白色LEDランタンと比較し, 補虫性能が優れていることが再確認された。また, 「4.1 LEDランタンの波長特性」により, 紫外線LEDランタンの分光放射照度(光強度)が高かったが, これは使用したLEDの差異によるものと思われる。その分を加味しても紫外線LEDランタンの優位性は変わらず, 群飛規模が小さい場合でも補虫性能が高いことから, イエシロアリ有翅虫群飛調査における使用機材として十分機能するものである。なお, 補虫結果のなかに補虫比率が低いものがあったが,何らかの要因によるものと思われる。推定の範囲ではあるが, 野鳥対策は行っているため群飛方向及び風向の影響や補虫用深皿トレーからの再飛出しなどが考えられる。いずれにしても紫外線LEDDランタンの優位性を否定するものではない。 シロアリ対策現場での群飛調査において平成25年から紫外線LEDランタンを試行的に使用しているが, 平成25年の検証により優位性が見られたことから, 平成26年よりすべてを白色LEDランタンから紫外線LEDランタンに置き換えて群飛調査を実施している。今後,群飛調査で得た情報をもとに営巣箇所の絞り込みを効率的に進め, 父島及び母島の総合的なシロアリ対策により一層の成果が表れることを期待している。