ブックタイトルしろありNo.162

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概要

しろありNo.162

38 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 4 . 7 N o . 1 6 2て記述しており, 幼虫は触角節数9か10節の2種としている。また, 触角節数が11 ?12の職蟻と同節数で翅芽を持ったニンフの2種形態の3齢幼虫についても言及している。よって, C. intermediusの成熟コロニーにおいては, 成虫の分化は2齢幼虫から出現すると結論し, 兵蟻は老職蟻から分化すると述べている。Bess25) はイエシロアリのコロニー成長について報告しているが, 形態的なデータは殆ど示されていない。King and Spink26),27) は, イエシロアリの初期コロニーにおける詳細な形態的データを初めて示しており, 初期の発生経路についての糸口を提供している。Higa28)はこれらの知見をもとに, イエシロアリの初期コロニーから3年経過コロニーの発達について, 優れた報告を学位論文において行った。Higaの学位論文に記載されたデータは, 今なお, イエシロアリのコロニー発達について貴重で価値のあるものであるが, 残念なことに十分に解析されたものでは無く, 学位論文以外では公表されていない。Watson( 未公表, Watson andSewell29) に記載)は, C. lacteus( Froggatt)の分化経路を推定しており, これは後にRoisin and Lenz30) により改訂されている。両研究とも, 1齢ニンフは2齢幼虫から出現し, 兵蟻は老雌職蟻から分化するとしている。ニンフが2齢幼虫から発生するとした同様の観察結果は, C. heimi (Wasmann) についてPajni andArora31) 及びAkhtar and Mahmood32) が, C. gestroi(Wasmann)についてCosta-Leonardo et al. 33) が報告している。しかしながら, Henderson and Rao34) は,Coptotermes属の分化経路に関する一般的な理解にもかかわらず, イエシロアリでは雄雌両方の職蟻が兵蟻に分化するとしている。Raina et al. 35) は,Coptotermes属ではニンフは2齢幼虫から分化するとした全ての先行文献 24),30),31),33) とは異なり, イエシロアリのニンフは職蟻から分化するとした。Raina et al.35) の観察は, イエシロアリの採餌箇所から採集した集団に限定されている。結果として, Raina et al. 35) は野外採集した集団で生じたニンフ分化に基づいての提唱であり, 幼虫が存在しない条件での職蟻に限定されており, ニンフの判別は触角節数をカウントしたのみである。さらに, Raina et al. 35) は, イエシロアリについて, 兵蟻の分化経路に影響を及ぼす一時的な要素があると示唆したHiga28) の報告を考慮しておらず, 分化経路を単純化している(図1)。これまで全く利用されていなかったHigaのデータを入手したことから, 我々はイエシロアリのカースト分化経路の概念を訂正する必要があると考えた。 本研究で,先行文献データを再検証し, 飼育している創成期, 成熟期, 老齢期コロニー及び野外の成熟期コロニーを観察することにより, 修正したイエシロアリのカースト分化経路を我々は提唱する。この再検証により, コロニーの年齢によって分化経路が複数あると結論付けた。図1 Raina et al.( 2004)が提唱するイエシロアリの分化経路を改編Wn:職蟻齢, S:兵蟻, PS:前兵蟻, Nn:ニンフ齢, Neo:短翅ネオテニック, A:有翅虫, Ln:幼虫齢( )内は各齢での代表的な触角節数