ブックタイトルしろありNo.162

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概要

しろありNo.162

42 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 4 . 7 N o . 1 6 2を示しているが, 確認が必要である。 成熟期コロニーの職蟻は老齢に達することが可能ではあるが, 本研究で実験室飼育コロニー・2巣, 野外コロニー・3巣の兵蟻(コロニーあたり100頭)を調査したところ, 触角節数15以上の兵蟻(S 4)は確認できなかった。大部分の兵蟻はS 3(触角節数14)であり, 成熟期コロニーにおいてもW 2→PS 3→S 3の経路が主流であることが示唆される。本研究での500頭/ 5コロニーの平均では, 12 %がS 2, 64 %がS 3, 24 %がS 4であった。採餌場所での兵蟻割合は, 10 ?15%に保たれていた。C. gestroiの実験室飼育コロニーと野外コロニーの観察では, 兵蟻の触角節数はイエシロアリについての本研究と同様に, 12 ?15であるとBarsotti andCosta-Leonardo48) は報告している。従って, イエシロアリの兵蟻の発生経路は明らかにC. lacteusと異なり29), C. gestroiとは似たような発生経路を示す可能性がある。 成熟期コロニーの特筆すべき特徴は, 有翅虫となって分散する経路のニンフを生産する点にある。イエシロアリではニンフのカーストはW 1から N 1へと分化すると Raina et al。35)は示唆している(図1);しかし,他のCoptotermes属との比較や, Raina et al. 35)に記載された結果を再検証したところ, これまで提唱されていた分化経路は再考すべきであると考えるに至った(考察参照)。成熟期コロニーでは, ニンフと有翅虫の出現経路はL 2→N 1→N 2→N 3→N 4→N 5→N 6→Aであると考える。ニンフは発達期間中は職蟻に世話をされていると推定されるが, 実験室条件ではイエシロアリのニンフは, 必要ならば自ら採餌し他個体(兵蟻および幼虫)へ与えることもできる, と Crosland and Su49)は示しており, ニンフの行動は柔軟性があることを示している。ニンフは, 特に群飛前の数ヶ月は, 採餌場所を見つけることもできる34)。成熟期コロニーではネオテニック(二次生殖虫)も存在し(考察参照), 恐らくニンフから分化したものと考える。老齢期コロニー 地下棲息シロアリの野外コロニーの寿命を判定することは困難である。野外コロニーが衰退期に入るのは35年後とGrace et al. 50) は記載している。コロニーが老化すると, 一次及び二次生殖虫の死亡が増加し, 生殖虫ペアの欠如により急速に若齢虫個体数が減少する23)。死亡する約6ヶ月前に産卵を中止した不健康な女王の事例についてBess25)が記載しており, この期間ニンフ型補充生殖虫が生産されなかった。女王の活性が低下したので, 産卵を中止したものの, 女王の存在が二次生殖虫の分化を妨げ(Costa-Leonardo et al.,33) も同様に示唆), ニンフは最後の群飛に向けて全て有翅虫となったと考える。この状況では, 若齢虫が存在しないのでニンフの発生がなく(L 2→N 1), ニンフ不在では二次生殖虫の分化も起こらない。補充個体数の不在は最終的には活性の低い老齢虫(職蟻と兵蟻)が増加することなり41), 50), 巣内の微生物生態系は大きく変化する39)。 老齢期コロニーでも最終群飛の後も数年は活性がある場合もあり(本研究), 我々の研究室では, 若齢虫や生殖虫不在のまま多数のシロアリ(200,000頭以上, 3コロニー)が3年生存した。最後の数ヶ月には, 老齢虫(W 4, W 5, W 6)のみとなった。老熟コロニーでの兵蟻分化は, 減少するものの, W 2が不在の為, 主にW 3→PS 4→S 4の経路をとる。W 3が存在しなくなれば, 新たな兵蟻発生は困難であろう。これによりS 4兵蟻が蓄積することになり, 兵蟻の齢構成が平均で3 %のS 2, 23 %のS 3, 76 %のS 4(62頭, 3コロニー, 本研究)であった。最終的にはコロニーは崩壊する39)。考察 我々の観察結果に先行文献データの再検証を加味し, イエシロアリのライフステージを5段階, 創成期コロニー, 未熟期コロニー, 若齢期コロニー, 成熟期コロニー, 老齢期コロニー, に分類した。これら5段階のステージについての記述に加え, イエシロアリコロニーの生涯を通しての特徴についても述べた。個々の生存予測値はコロニー年齢により影響され, 各齢期間はコロニー年齢と個々の年齢によって決まると考えられる。さらに, ニンフへの分化経路と二次生殖虫の存在について, 考察する。イエシロアリではW 4は職蟻の最終カーストであるとし, 最後に創成期コロニーの小型兵蟻の役割について考察する。齢期間と平均寿命 創成期コロニーでは, W 1とW 2に速やかに成長するが寿命は短い。Higa28) は, 創成期コロニーでの平均齢期間は, L 1 は12日, L 2は22日, W 1は24日, W 2は114日としている。従って, 初生卵は, 速やかにW 2となるが, そのままW 2に留まる。コロニー年齢によっては各個体の寿命は長くなり齢は進むが, 一定の齢に留まる。未熟期コロニーではW 4, 若齢期コロニーではW 5