ブックタイトルしろありNo.162

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概要

しろありNo.162

Termi te Journal 2014.7 No.162 43になる前に死亡することから, シロアリはコロニーの段階によって, 脱皮せずにその時に到達可能な齢に留まることが示唆される。Higa28) の観察から, 個々の生理学的な状態は, シロアリの密度, 有効な資源量, 若齢虫の世話, 経時的に変化するコロニー構成として, コロニー年齢により直接影響を受けると考える。職蟻はそのコロニー段階で到達可能な最高齢になると, その齢に留まり若齢個体の世話をすることが, 次の齢へ脱皮することより, エネルギー的に有効である。脱皮プロセスは個体にとってコストがかかり(数日間の絶食と成長, Raina et al.,51)), Xing et al.52) の観察にもあるように脱皮に失敗して死亡することもある。創成期コロニーの段階では, 高死亡率かつ短命である28) ことから, 限界の生理的ストレスにさらされていると考える。従って, 創成期コロニーではW 3が殆ど見当たらない理由は, 大部分のW 2がその齢に留まり, また, 脱皮しても殆ど生き残らない, ということが考えられる説明のひとつである。 全体として, 職蟻の齢期間についての報告は少ない。我々の知るところでは, Nakajima et al.41) の報告が手掛かりとなる数少ない報告の一つであるが, それでも我々の推測の一助にすぎない。Nakajima et al.41)は, 個体群の期間を推測し, 季節と温度に影響され, 職蟻(W 2?W6)は40日?6ヶ月程度であるとしており,また, Raina et al.51) は, 齢が高くなると齢期間が長くなるとしている。実験室飼育の老齢期コロニーでは(Chouvenc et al.,39); 本研究), 野外から採集した個体は約3年生存し, W 4, W 5, W 6 (恐らく若干のW 7)で死亡したが, このことから室内条件かつ個体数が多い場合は, 平均的には各齢期間は少なくとも7ヶ月継続すると考えられる。Raina et al.51) は, イエシロアリ職蟻の脱皮と脱皮の期間は3ヶ月以上であるとしている。明らかに異なった結果であり, 様々な要因が次の脱皮時期に影響を与えるように思われるので, 齢期間をうまく説明するには詳細な研究が必要である。あるいは, 遺伝的背景, 環境, 年齢によって, 個々のシロアリが所定の齢となりそれ以上の脱皮を中断する(高い齢のみ)ことも考えられる。 創成期コロニーについてはHiga28)及びKing andSpink26) のデータを, 成熟期コロニーについてShimizu23) 及びNakajima et al.41) のデータを再検証することによって, ある齢の職蟻が生存し次の齢へ進める確率を推定することができた。創成期コロニーでは,死虫率はL 2及びW 1では50 %, W 2では95 %近くになった。コロニーが成熟し職蟻が長く生存し高い齢に達することができるようになって, コロニーメンバーによる世話レベルが改善されることにより, 若個体がW 2になるチャンスが比較的高くなる。しかし, W 2またはW 3が高い齢個体と共に採餌活動の一部を担うと,危険にさらされることになる。Shimizu23)は, 成熟期コロニーでは, W 4が採餌場所にいる主要なステージであり, 大部分の個体がW 4に達しうるとした。その後, 高い齢の職蟻の数は, 齢が進むと次第に減少する(表1)。表1 イエシロアリ成熟コロニーの採餌職蟻の生存率(Shimizu, 1962のデータから改編)Survival rate for aworker to successfullymolt into the next instaraSurvival rate for a W3worker toreach a giveninstarW3 → W4 96 % W3 → W4 96 %W4 → W5 41 % W3 → W5 39 %W5 → W6 29 % W3 → W6 11 %W6 → W7 11 % W3 → W7 1 %a:Shimizu (1962)のデータでは, 成熟コロニーではW4が最も多く, 殆どの職蟻はこの齢に達する。W3→W4での生存率96 %は, それまでの死亡率を考慮した推定値である。他の死亡率は12コロニーの年齢グループから算出した(Shimizu, 1962)