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概要

しろありNo.163

14 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 5 . 1 N o . 1 6 34.沖縄の板倉構法 沖縄では戦後の米軍統治時代の影響と木材資源の枯渇によって, 木造住宅は途絶え, 鉄筋コンクリートやコンクリートブロック造の住宅が一般化したが, 近年その構造が台風に対しては堅牢で信頼できるものとなったが, 高温多湿な気候のなかで, 結露やカビの発生と熱籠りによる室内環境の問題が難しいことから, 木造住宅見直しの気運が高まっている。木材は南九州や四国産の豊富なスギ材の移入に期待が寄せられている。しかし一方で, シロアリの害が危惧されその対策が課題となっている。沖縄のシロアリはイエシロアリであり, 乾燥した木材でも害を受けるその恐ろしさは沖縄の住民の知るところである。 沖縄の伝統的な木造建築には, シロアリの害を受けにくい木材, イヌマキ, イジュ, モッコク, シイ等が使われてきた。しかし戦後それらの木材資源は枯渇して使うことができないので, 本土のスギが移入されている。ヒノキも一時的に使われたが, これは意外にイエシロアリに弱く, とくに白太(辺材)はたちどころにシロアリの食するところとなる。赤身はそれほどでもないがヒノキの赤身だけで揃えるのは量としても価格の上でも困難である。その点スギは成長が早く赤身も多く, 価格も安い。そしてスギの赤身はイエシロアリも食べないのである。このスギの赤身のシロアリや腐朽菌に強いことは, 伝統的に知られていた。南九州や高知では土台としてスギの赤身が長く使われてその信頼性が高い。また古民家の修理現場においても, 柱の根元が傷んでいても, スギの赤身だけがそっくり残っている例も良く見ることができる。 このような背景を受けてスギで沖縄に板倉の家をつくるプロジェクトが沖縄の工務店と徳島の那賀川流域の製材組合の共同によって始まった。その特徴は以下の通りである(1) 基本構造は板倉構法として, 土台にはヒバ, 柱, 大引にはスギの赤身を用いる。(2) 外壁は板倉の本体構造の上に, 焼きスギ板を2重張りとして, 台風時の雨仕舞とシロアリ対策とする。(3) 屋根は伝統的な赤瓦葺きを復活して, 台風に耐えるとともに, 素焼瓦の蒸散効果で遮熱を図る。 今後経年変化を観察してその効果と問題点を明らかにして沖縄にシロアリに負けない木造住宅の普及に役立てたい。また温暖化が進む日本列島において, 沖縄で有効性が確かめられた生物劣化対策が, 日本の本土においても役立つことが期待できる。(写真9)(写真10)参考文献1) 吉広祥子, 他 (2012): 板倉構法による現代住宅の居住環境評価 温熱環境の実測調査および居住者の体感に基づいて, 日本建築学会大会学術講演梗概集, 429-430.2) 橋本剛 (2013): 板倉構法による応急仮設住宅の住み心地 ?室内温熱環境の実測調査から検証する,森林技術, No.852,21-25.3) 橋本剛, 他 (2015): 八ヶ岳山麓の板倉に形成される温熱環境に関する実測調査, 日本生気象学会雑誌,52(1),写真9 沖縄の板倉の家外観写真10 沖縄の板倉の家、壁構成原寸大模型