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概要

しろありNo.163

Termi te Journal 2015.1 No.163 15研究トピックスResearch Topics1.はじめに アクアポリン(aquaporin: AQP)は細胞の「水の通り道」を形成するチャネルタンパク質である。昆虫では後腸やマルピーギ管(ヒトの腎臓に相当)に分布し浸透圧調節に関与することが知られている1)。一般的に乾燥に弱く, 生活環境に応じて効率よく水分を利用していると考えられるシロアリでは, イエシロアリからアクアポリン遺伝子が得られている 2)。本稿では,タンパク質レベルでの解析により明らかになった3),イエシロアリ体内でアクアポリンが分布する組織と,発現部位から考えられる生理的役割を紹介する。2. 試料と方法 ~ウェスタンブロット解析および免疫組織化学~ イエシロアリ体内のどの組織にアクアポリンが発現分布しているか調べるために, 職蟻の前腸, 中腸, 後腸,直腸, 唾液腺, 貯水嚢, マルピーギ管より抽出したタンパク質をSDS-PAGEにより分離し, イエシロアリアクアポリンと相同性を有し, 特異的に反応することを確認したチョウ目昆虫カイコのアクアポリンの抗体を用いてウェスタンブロット解析した。次に, 発現が確認された組織での局在性を調べるために, イエシロアリ職蟻の組織を固定・包埋した後に切片を作製し, 同抗体を用いた免疫染色を行った。3.結果と考察 ウェスタンブロット解析により, イエシロアリ職蟻においてアクアポリンは特に唾液腺で多量に発現することが明らかになった(図1)。また, 免疫染色の結果,イエシロアリアクアポリンは, 唾液腺を構成する細胞のうちparietal cell(傍細胞)に局在していた(図2)。シロアリ職蟻の唾液は多くの生理的役割を担っており, 特にセルラーゼ等の酵素は木材を消化・利用するために重要であるが4), 消化酵素は溶媒として水が存在しなければ機能しない。唾液腺のparietal cell(傍細胞)は体腔(血液側)と唾液腺管腔(唾液側)を横イエシロアリの唾液腺ではたらく水チャネル「アクアポリン」(独)森林総合研究所木材改質研究領域木材保存研究室 神原 広平図1  イエシロアリ職蟻におけるアクアポリンの組織特異的な発現.唾液腺において顕著なシグナルを検出(?)図2  イエシロアリ職蟻唾液腺におけるアクアポリンの免疫組織化学的観察(?で示した赤色部に局在,青色部は核を染色)