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概要

しろありNo.163

2 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 5 . 1 N o . 1 6 3らせた。これをオオシロアリ(Hodotermopsis sjostedti)に摂食させ, 経時的かつ網羅的に消化管各部位(前腸,中腸, 後腸前半部, 後腸後半部)の抽出物に検出される代謝産物の変動を追跡した6)。3.オオシロアリのセルロース代謝系 2次元(HSQC)NMR法による測定の結果, オオシロアリの消化管抽出物から256シグナルが検出された。この方法では, ひとつの代謝産物から平均4つ程度のシグナルが得られるので, 今回の解析ではおそらく60前後の代謝産物を検出していたと考えられる。これを既知物質のデータベースと比較して代謝産物を同定するのであるが, 得られたシグナルのうち約1/4は未知の物質由来であった。実際には185のシグナルから46個の既知代謝物質を同定した。その一覧を(表1)に示す。また, 本研究結果から予想される代謝経路を(図1)に示す。なお, 今回のような代謝産物解析手法を用いた場合, 解析結果の解釈にはいくつか注意が必要である。まず, 代謝最終産物や代謝速度があまり速くない中間代謝物などは比較的容易に検出されるが, 代謝速度の非常に速い中間代謝物は必ずしも検出されるとは限らない。また, 今回の測定では低分子化合物に焦点を当てており, タンパク質などの高分子化合物は検出されない。さらに, ギ酸や炭酸塩は一次元NMRによって存在を確認しているが, 今回の2次元NMRの測定範囲外の周波数領域で検出されるため, 本測定には含まれていない。したがって, 本研究で得られたシグナルが消化管に含まれる代謝物全てを表しているわけではない。図1 オオシロアリのセルロース代謝経路    宿主の予想代謝経路を実践矢印で、共生微生物の予想代謝経路を破線矢印で示す。アミノ酸は一般的な3文字略号で示した。Tokuda et al.( 2014) Figure 3を改変6)表1 オオシロアリ消化管から検出・同定された代謝物一覧1. メチオニン(必須アミノ酸)2. フェニルアラニン(〃)3. リジン(〃)4. ヒスチジン(〃)5. トリプトファン(〃)6. イソロイシン(〃)7. ロイシン(〃)8. バリン(〃)9. トレオニン(〃)10. アルギニン(〃)11. アラニン(非必須アミノ酸)12. アスパラギン(〃)13. アスパラギン酸(〃)14. グルタミン(〃)15. グルタミン酸(〃)16. グリシン(〃)17. プロリン(〃)18. セリン(〃)19. チロシン(〃)20. シスチン(〃・システイン酸化体)21. ペプチド(アラニルアラニンやグリシルプロリンなどを含む)22. プトレシン(アミノ酸誘導体)23. アセチルカルニチン(〃)24. カルニチン(〃)25. クエン酸(クエン酸回路などに関連)26. α-ケトグルタル酸(〃)27. コハク酸(クエン酸回路・ヒドロゲノソームなどに関連)28. リンゴ酸(〃)29. 酢酸(揮発性脂肪酸)30. 酪酸(〃)31. プロピオン酸(〃)32. セロビオース/セロオリゴ糖(セルロース分解産物)33. グルコース(〃)34. パノース(3糖類)35. リボース(五炭糖・ペントースリン酸経路関連)36. トレハロース(2糖類)37. 2-ホスホグリセンリン酸(解糖系関連)38. 3-ホスホグリセンリン酸(〃)39. ジヒドロキシアセトンリン酸(〃)40. 乳酸(〃)41. フルクトース-6-リン酸(〃・ペントースリン酸経路関連)42. グルコース-6-リン酸(〃)43. グルコース-1-リン酸(セルロース加リン酸分解/グリコゲン生成関連)44. α-グリセロリン酸(リン脂質合成関連)45. 脂肪酸46. シロイノシトール(糖アルコール)