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概要

しろありNo.163

4 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 5 . 1 N o . 1 6 3め, 遊離アミノ酸としてはほとんど後腸において検出さていない可能性が考えられる。逆に後腸でわずかばかり検出される必須アミノ酸のシグナルが, 前腸において後腸後半部とよく似たパターンを示し, 中腸で極めて強いシグナルが検出されるのは, シロアリが栄養交換によってこれらの腸内微生物を肛門から摂食し,中腸で消化することによって生存に必要な必須アミノ酸を獲得していることを示しているのではないだろうか。そうであるとするならば, 必須アミノ酸合成とセルロース分解のシグナルが同調しないことにも矛盾しない。これらの研究結果からシロアリの洗練されたセルロース分解機構に加え, 社会性昆虫独特の行動様式を介した巧みなアミノ酸獲得戦略が浮かび上がってくる。4.今後の展望 このようなNMRを応用した, いわゆるメタボローム的な解析は, これまでブラックボックスに近かったシロアリ腸内における実際の代謝物やその挙動をつぶさに明らかにしていく可能性を秘めている。しかし本手法には, ややシロアリの研究には不利な弱点があることも否めない。実はNMRによる一回の測定には乾燥重量で約10mgの試料が必要であり, 小型のシロアリを前腸中腸後腸前半部後腸後半部解糖系関連なし2-ホスホグリセンリン酸2-ホスホグリセンリン酸グルコース-1-リン酸2-ホスホグリセンリン酸グルコース-1-リン酸3-ホスホグリセンリン酸3-ホスホグリセンリン酸グルコース-6-リン酸3-ホスホグリセンリン酸グルコース-6-リン酸フルクトース-6-リン酸フルクトース-6-リン酸α-グリセロリン酸フルクトース-6-リン酸α-グリセロリン酸α-グリセロリン酸乳酸ジヒドロキシアセトンリン酸乳酸ジヒドロキシアセトンリン酸クエン酸回路やヒドロゲノソームなどなしクエン酸クエン酸クエン酸コハク酸コハク酸コハク酸揮発性脂肪酸なし酢酸酢酸酪酸酢酸酪酸プロピオン酸プロピオン酸必須アミノ酸なしなしリジンリジンバリン非必須アミノ酸なしアラニングルタミン酸アラニングリシンアラニングリシンアスパラギングリシンアスパラギン酸プロリンアスパラギン酸プロリンアスパラギン酸プロリングルタミンセリングルタミンセリングルタミンセリングルタミン酸グルタミン酸アミノ酸誘導体なしアセチルカルニチンアセチルカルニチンアセチルカルニチンプトレシンプトレシン糖類なしパノースパノーストレハロースパノーストレハロースリボースリボースリボースTokuda et al.( 2014) Table 1を改変6)表2 セルロース分解と同調したシグナル変化を示した代謝物