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概要

しろありNo.164

14 Termite Journal 2015.7 No.164 劣化の要因は表2に示すように6項目とし, 報告書の記載内容を振り分けた。 劣化の程度については, 「無被害」についても明確にすべきであるが, 報告書においては無被害の部位, 範囲が示されたものが1割程度と, ほとんど表記されていないことから「無被害」を除外している。 劣化の程度について田中ら1)は劣化指数Dを提案している, 蟻害・腐朽の被害度, 部材のうち被害がある部分の長さ等を用いるため, 報告書上の図面及び写真からの判断は難しい。また, 白対協は文化財等の調査では原則として非破壊検査を行っているため, ドライバーを突き刺して劣化程度を評価する(公社)日本木材保存協会の木材劣化診断士公益社団法人 「公益社団法人 日本木材保存協会:劣化診断の事例(http://www.mokuzaihozon.org/info/rekka/jirei/index.html)」の手法も用いることができない。 そこで, 社団法人日本しろあり対策協会 東北・北海道支部 福島支所により平成23年11月4日に行われた飯野八幡宮の調査報告書で用いられている, マイナスポイントによる評価手法に準拠して劣化程度の数値化行うこととした。これは劣化の程度を「重要(A)」,「要改善(B)」,「 経過観察(C)」の3つで判断する。問題の指摘箇所数にAは-10, Bは-5, Cは-2を乗じて, マイナスポイントを算定し, 調査建物毎のマイナスポイントの平均値の絶対値を用いて, 補修や補修計画の参考にすることができるというものである。飯野八幡宮以外の報告書でもA, B, Cの三段階評価が行われているものはその評価を, 行われていない報告書では, 新たに評価を与えることとする。ただし, 問題の程度は調査員の主観的な判断であることに留意する必要がある。評価基準は各報告書の写真及びコメント, 所見などと, 飯野八幡宮報告書の評価を参考にした。また, 上記マイナス値を設定した根拠が不明のため, 本研究では各程度におけるマイナス値を, 表3のように重み係数とし-3, -2, -1としている。さらに, 維持管理のための情報提供としてABCの尺度は健全なものをAと認識する恐れがあることから, 劣化程度の重いものからDCBの順として「重要(D)」「要改善(C)」「経過観察(B)」の3段階に改めている(表3)。今後,報告書に健全部の記載が行われるようになった場合は「健全(A)」が追加されることになる。 文化財建造物の方位ついて, 本来の場所から移築された調査対象もあることから, 移築前後の方位が異なる可能性がある。そこで本研究では資料等に記載のものではなく現状の方位を用いることにした。また, 報告書記載の平面図に方位が明記されていない場合には, 報告書の写真, コメント, Google社のGoogleマップなどから方位を判断する。図3のように平面図を9分割した8方位と中央, 不明の10項目で分類することにした。また, 棟が複数あり, それらが長い廊下で繋がっているものは, 棟毎に方位を定めることとした。表3 劣化の程度と評価基準程度重み係数評価基準重要(D) ‐3 倒壊の恐れがある, 劣化が進行中(生息中)など要改善(C) ‐2強度に問題がある, 劣化が進行中の可能性, 雨漏りなど経過観察(B) ‐1 強度に問題がない, 生息不明など図3 調査文化財建造物の方位 文化財の建築年代は, 文化財の指定団体・種類によらず, 文化庁「国宝・重要文化財(建造物)種類別・時代別指定内訳(http://www.bunka.go.jp/bunkazai/shoukai/yukei_kenzoubutu1.html)」に基づく近世以前の奈良・平安・鎌倉・室町・桃山・江戸, 近代の明治・大正・昭和時代として分類している。 調査を行った文化財は木造建築物等防腐・防蟻・防虫処理技術指針・同解説 改訂版(昭和61年10月)2)による建設地区分と都道府県名(表5)に従い分類を行い, 生物劣化と地域に関する検討を行う。2.3 分析方法 以下の手順で劣化の部位などを報告書から拾い出す。1) 検査部位を撮影した写真と部位名や劣化に関するコメント, 所見の有無を確認する。2)コメント以外には劣化内容が判断できないため,  ・ 写真とコメントあり:部位・劣化内容・程度をカウント