ブックタイトルしろありNo.164
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しろありNo.164
Termite Journal 2015.7 No.164 214. まとめ 報告書の分析を通じて, 文化財建造物の維持保全のために留意すべき事項は以下に要約される。1) 生物劣化は床下に多く見られるが, 部位に関わらず, シロアリと木材腐朽菌の被害を受けやすく,2つ以上の劣化が並行して起こっていることが多い。2) 床下中央部での劣化が多数あること, 含水率が高いことから, 床下中央部まで換気が行き届かない環境が形成されていることがうかがえる。3) 過去の劣化と思われるものは古材の転用によるものか, 移設・改修後の部材によるものなのか判断が出来ない。部材を入れ替えるときにマーキングをしておくことで, 交換の目安にすることができる。4) 床下の劣化は床下空間での目視ができなければ発見は困難である。過去の改修により, 床下への進入ができない部分が生じるなど, 床下点検を考慮していない改修がある。また, 床下に改修時の残材を放置することが蟻害を招く恐れがある。補修のための古材のストックでは十分な注意がであることを建築側に啓発して意識を持たせる必要がある。5) 含水率や方位のような客観的なデータと劣化ポイントのような主観的なデータの両方を文化財管理者・所有者に与えるのではなく, 施主が維持管理に関心を持てる有益な情報とすることが, 定期的な点検に繋がると考える。6) 劣化ポイントは一年分だけでなく, 定期点検によりデータを積み重ねていくことで活用できるものである。客観的なデータとして用いるためには,劣化ポイントの重み係数の合理的な設定が求められる。引用文献1 )田中俊成, 鈴木憲太郎(1982):自動車研究所宿舎の木質部材の含水率と腐朽・蟻害の調査, (社)日本木材保存協会会誌『木材保存』22号, pp.32?45.2 )建設省住宅局建築指導課監修 木造建築物等防腐・防蟻・防虫処理技術研究協会編集 社団法人日本しろあり対策協会発行(1986):木造建築物等防腐・防蟻・防虫処理技術指針・同解説 改訂版, pp.25?27.3 )一般財団法人日本建築総合研究所発行(2013):建築の試験・研究情報誌GBRC, Vol.38, No.2,152号, 兵庫県内の木造文化財の保存・修復, 6.7部材保存と伝統技法保存, p.16.