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概要

しろありNo.164

30 Termite Journal 2015.7 No.164報 文Reports札幌市と周辺地域内におけるシロアリ被害家屋調査の開拓歴史と地勢からみた考察株式会社 青山プリザーブ 青山 達哉はじめに 北海道におけるシロアリの最北生息確認地は名寄市(北緯44度22分)であるが, その存在は道民にはまだまだ認知度は薄く, 我が国温暖地の激害地域と比較すると, 家屋被害は極わずかであると思われる。生息確認は点の分布にとどまり, 面の拡がりには至っていない。しかし, 過去の文献は多く, 北海道におけるシロアリ調査史は明治初期(1885, 明治9年)にブラキストン氏による茂辺地(函館近郊)での採取記録に始まり1),松村博士(1903, 1916), 名和白蟻翁 (1918), 服部博士ら(1970, 1976), 大津氏ら(1973), 青山博士ら(1976,1977, 1981, 2003, 2004, 2005)など多くの記録が残っている2)。家屋被害文献だけを歴史的にみると, 45年前の服部博士による札幌市内家屋被害に始まり, 新しいものでも青山博士(1977)による札幌市内多発地域推定図が記載されて以来38年間札幌市と周辺地域における生息状況の記載が見当たらない。これらの文献に加味すべく, 地勢的な文献を加えて, 被害家屋分布の拡がりを地勢的な考察を試みたので参考に供する。1. 調査方法と地域別割合 本調査方法は, 2006年4月から2014年3月までの9年間に依頼があって筆者が直接か社員の協力により,シロアリ調査を実施し集計した(表1)。地域別内訳は札幌市内が103件, 小樽市8件, 余市町3件, 石狩市2件, 北広島市1件, 江別市1件の合計118件であった。しかし, 今回は地勢や風向きとの関係を調査するうえで, 札幌市内より距離のある余市町及び小樽市は集計から除外し, 合計107件について検討した。調査集計期間の9年間で調査物件数が最低6件, 最高18件, 平均12件で推移していて, 年によるバラつきが多く, 極端な調査依頼件数の増加の年は無かった。調査依頼件数の割合が1番高かった地区は, 札幌市中央区の28%に次いで豊平区(17.8%), 西区(15.0%), 白石区(11.2%)の順で多く, これら4区だけで全体のうち72%を占めていた。札幌市と周辺地域は北海道内の他地域と比較すると, 多い様に思われがちではあるが, 本調査においても, 札幌市民の間にはシロアリが極めて少ないか生息していないと思っている市民が多いことを実感させられた。筆者らへの直接調査依頼は少なく, ハウスメーカー, 不動産, 保健所への相談, または, インターネットを見て等であって, 特に知っていて欲しい建築関係や不動産関係の業者の間にも十分なシロアリに関する情報はまだ伝わっていないのが実情であった。前述した古い順に文献を見ると, シロアリの生息域が札幌と周辺全域に拡大したかに思えるが, 実際には, シロアリが細々と生息していた地域に開墾, 治水事業,宅地造成とともに居住地が元来の生息地へ拡大したためと思われる。しかし, それも少ない調査物件数ゆえに, 推定域を出ない。北海道の中では比較的早く治水事業が竣工され, 方言で「野地(やち)」と呼ばれていた低湿地植物未分解地域の宅地造成が今なお継続中の札幌市とその周辺を対象として, 文献と調査地シロアリの家屋被害がどの程度, さらに, どの地域の生息分布が多いのかとの関連に興味を持たなければならないであろう。地域別駆除依頼件数割合中央区30 28.0%豊平区19 17.8%西区16 15.0%白石区12 11.2%清田区8 7.5%手稲区6 5.6%南区5 4.7%東区4 3.7%北区3 2.8%石狩市2 1.9%北広島市1 0.9%江別市1 0.9%合計107 100.0%注)区の表示は全て札幌市内表1 地域別調査依頼件数及び割合