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概要

しろありNo.164

40 Termite Journal 2015.7 No.1643. 試験結果3.1 食害状況 食害の進行は, 試験体ごとに大きな差がみられ, トドマツよりもオウシュウトウヒの方が食害の進行が速い傾向がみられた。トドマツでは心材よりも辺材側に食害が集中し, 食害が激しくなると辺材の部分が失われる試験体がみられたが, 食害が激しい試験体においても心材部の食害は軽微であった(写真2a)。オウシュウトウヒでも同様に辺材側に食害が集中する傾向もみられたが, 心材側も食害が進んでいた試験体もみられた。食害が激しい試験体では全体にわたって食害が進行していた(写真2b)。2.3 測定項目 生物劣化を測定する機器として, 打ち込み深さ測定器(ピロディンc:6.0J)と, 超音波伝播速度測定器(ドクターウッド)を用いて, 図2に示す位置で測定した。打ち込み深さは, 試験後に試験体から鋼板を取り外し,ねじ穴を挟んだ2箇所に打ち込み, その平均値を測定値として用いた。超音波伝播速度は食害後に木ねじを留めた部位を挟んだ接線方向(T方向)と留め付け位置付近で半径方向(R方向)を測定した。また, 試験後に試験体中央側の木ねじ部付近から厚さ約10mmの試験片を切り出し, その重量と食害を受ける前の容積より容積密度を算出した。なお, 試験時の含水率は同試験片を用いて全乾法により測定し, トドマツで6.8~11.5% , オウシュウトウヒで7.0~12.8%であった。図3 加力装置PP変位計試験体木ねじ図2 劣化診断機器及び容積密度測定箇所容積密度測定箇所(単位:mm)10打ち込み深さ(鋼板除去後ねじ穴の横)超音波伝播速度(T方向)超音波伝播速度(R方向)写真2 切り出し断面。a.トドマツ;b. オウシュウトウヒ2.4 試験方法 図3に一面せん断試験の加力装置を示す。加力は,木材用万能試験機(エクセム:Mok-U50)を用いて載荷速度は2mm/minの正負交番一回繰り返し載荷とし, 加力スケジュールは±0.5→±1→±2→±4→+25mmとした。変位はストレインゲージ式変位計(東京測器研究所:CDP-50)を用いて鋼板と木材との相対変位を計測した。3.2 破壊性状 写真3に試験体の破壊性状, 図4, 5に代表的な荷重-変位曲線の一例を破壊性状と樹種ごとに示す。破壊性状は, 木ねじ頭の破断, 木ねじの木材へのめり込み,木材の割裂, 木材のせん断破壊の4つに大別された。ここで, せん断破壊は食害部分と健全部分の境界で試験体の一部が剥離したものを指す。木ねじ頭の破断は変位がほぼ15~20mmの間で起こり, 他の破壊性状より最大耐力が高い傾向がみられ, 木ねじが木材にめり込む破壊をした試験体は最大耐力を発現後の荷重低下が緩やかな傾向がみられた。また, せん断破壊は, 辺材側の食害が激しいトドマツ試験体にのみみられ, 最大耐力は低い傾向がみられた。ab