しろありNo.165
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9Termite Journal 2016.1 No.1653.2 処理レベル シロアリに対して十分な殺虫効力が発現する処理レベルとして, 質量パーセントとして0.24%BAE(BAE:boric acid equivalent(ホウ酸当量)。ホウ酸イオンの生成量からホウ酸に換算した時の量)が必要とされる。ホウ酸塩には忌避性がないことから, シロアリによる食害を完全に阻止するためには0.2%BAE(質量パーセント)を越える処理量が必要である5)。 米国とヨーロッパ諸国の多くの研究者が, シロアリに対する予防・駆除処理用としてホウ酸塩に再注目しつつある10)。対シロアリ用としては通常4.5㎏/㎥ BAEを越える吸収量が推奨されている。英国においては一般的1.8㎏/㎥ BAEが求められるが, 一方, ドイツでは長年にわたって1.0㎏/㎥ BAEの浸漬処理が行われている。SuとSchef-frahnはDOTを用いて0.51–1.83% BAEおよび0.40–1.54% BAEの処理を行うことによって, それぞれイエシロアリとReticulitermes avipesの食害を減少させることができると報告している11)。しかしながら, GentzとGraceはイエシロアリの食害を減少させるためには, より高い濃度が必要であるとしている1)。これらの研究成果は, 米国環境保護局(EPA)による対シロアリ用薬剤としてのホウ酸塩の採用に当たっての根拠となっている10) 。 Ahmadによれば, ホウ酸塩は高等シロアリ(1.09% BAE)よりも下等シロアリ(0.46 - 0.56% BAE)に対してより効果が高い10)。オーストラリアにおける室内試験の結果, ホウ酸, 8ホウ酸ナトリウム・4水和物, 8ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸銅は高等シロアリ1種(Nasutitermes exitiosus)と下等シロアリ2種(Cop-totermes lacteus, C. acinaciformis)に対して効果があり, 食害を防止するためには1.09% BAEが必要であった。Tsunodaは, イエシロアリに対して殺虫効力のある閾値として, スギ辺材試験体に対する処理濃度0.90 - 1.80㎏/㎥ BAEを報告している12)。 これらの研究成果をもとに, ヨーロッパ規格EN 117 では, DOTによる対シロアリ用吸収量として5.60㎏/㎥(1.12% BAE)が採用されている13)。一方, 米国木材保存協会規格AWPA U1-12においては, 無機系ホウ素化合物の土壌と接触しない状況で使用される製材品に対する対イエシロアリ吸収量を4.50㎏/㎥と規定しており, イエシロアリが生息するすべての地域に適用可能な値であると考えられる。イエシロアリ以外のシロアリに対しては, 2.70㎏/㎥の吸収量が推奨されている。これらの値は, 合板などの木質複合材料に対しても同様に適用されるものである7)。4.木質系複合材料への応用 当然のことながら, 木質系複合材料の耐シロアリ性能の向上のためにもホウ酸塩は使用可能である。加圧成形の前にホウ酸塩を樹脂やワックス, あるいは木材そのものとの混合することによって耐シロアリ処理木質材料の製造が可能である。長軸方向に長い積層構造材においては, ホウ酸亜鉛などの粉状製剤を, 材料の表面仕上げ時に塗料に混合して直接噴霧することもよく行われている。無機系ホウ素化合物の中ではエンジニアードウッド(EN材)に対する拡散性という観点から見てDOTに優位性がある。表面仕上げ剤にホウ酸塩のような拡散性の薬剤を複合させると, 材料のより深い場所までの生物劣化防止層の形成につながる。この場合, 表面の仕上げ剤が物理的な防水, 防菌, 防シロアリ層として働くとともに, 内部に拡散したホウ素化合物が木材腐朽菌類や昆虫類による劣化を阻止する3, 14, 15)。 耐生物劣化性能の高い面材料を製造するためのより実用的な方法として, 製板後における非膨潤性処理(=非水系処理)が挙げられる。これには, 例えば蒸散性の有機系ホウ素化合物であるメトリチルホウ酸(TMB)を用いた蒸気処理などがある(表1)15, 16)。 グリコールとホウ酸塩による複合処理もまた材料製造後の処理方法の一つとして考えることができる。室内試験のレベルでは十分な耐イエシロアリ性を発現することが示されている9, 15, 17)。 ホウ酸亜鉛を用いた木質系複合材料の非加圧注入処理が米国木材保存協会規格AWPA T1-12によって規格化されている。ラミネーテッドストランドランバー(LSL)に対しては紛状あるいは液体状の製剤が使用可能であるが, 一方, 配向性ストランドボード(OSB)については, 粉状製剤のみが規格化されている。LSL, OSBおよびサイディング材において必要とされるホウ酸亜鉛の処理量は, 質量パーセントでそれぞれ0.90, 1.46および1.46%である7)。5.銅とホウ素の複合製剤 銅とホウ素系化合物との複合処理が, 幅広い生物活性スペクトルを持つ新世代の木材保存剤として注目されている。例えば, ホウ酸銅, メタホウ酸銅, ホウ砂-銅(BC)(Cu-BOR), 銅アゾール-Type A, CFB(酸化銅+2フッ化アンモニウム+ホウ酸), 銅HDO+炭酸水酸化銅+ホウ酸, ジデシルポリオキシエチル-ホウ酸アンモニウム + 炭酸銅+ホウ酸, 酸化銅+3酸化クロム+ホウ酸(CCO), 銅・クロム・ホウ酸(CCB), などがある3)。

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