しろありNo.165
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19Termite Journal 2016.1 No.165研究発表Presentations at the Research Meetingシロアリ対策ケーブル「ありタフ!」の開発及び検証結果報告タツタ電線株式会社 勝矢 利明、曽我部 聖司1.はじめに 住宅や工場等で使用される防蟻性能がない汎用的なケーブルでは写真のようなシロアリの食害が発生している(写真1)。シロアリがケーブル外被の表面に穴をあけ, 最悪の場合火事や停電など大きな事故につながる恐れがある。 ケーブルのシロアリ対策は, シロアリの強い顎の力に対抗するため, ケーブル外被に硬いナイロン12(以下ナイロンという)を被覆したものが一般的である。 しかし, ナイロンは非常に高価であり, ケーブルを製造する際, 材料を乾燥する必要があるなど手間がかかる上, 布設時に硬く曲げづらいといった作業面の問題があり, 残念ながら一般的なユーザーへの納入実績が少ないのが現状である。 この問題を解決するため, ①ナイロンと同等以上の防蟻性能を有し, ②ナイロンほど材料価格は高くなく, 製造作業性を改善し, ③ナイロンより低摩擦性を有した新防蟻材料を開発した。特に低摩擦性はナイロンより約40%程度小さく, 防蟻性能を高める1)だけでなく, ケーブル布設時の延線張力が軽減し作業性を大きく向上している。 材料のシート試験による防蟻性能の検証結果は「しろあり」2014年7月号 No.162に報文「シロアリ対策ケーブル(ありタフ)」にて報告した。 今回は, 新防蟻ケーブル「ありタフ!」の実際のケーブルによる防蟻性能の検証結果について報告する。2.防蟻性能試験2.1 フィールド試験 2014年1月に鹿児島県日置市吹上浜国有林内に設置された屋外試験地(京都大学生存圏研究所・生活・森林圏シミュレーションフィールド(LSF))にて, 京都大学生存圏研究所 吉村剛教授のご協力を得て実際のケーブル試料を埋設したものを再度掘り返して食害状況を確認した(2014.1~2014.11 10ヶ月)。1)試験試料 ケーブル試料表面の材質は, ナイロン, 新防蟻材料, ビニルとした。金やすりにより表面傷の有るものと無いものを用意し30本(N=5)を埋設した。 金やすりによるケーブル表面の傷は, ケーブル延線時, ケーブル外被に地面, 管路等で擦れ傷がつく場合があり, 傷による食害の影響を確認するためである。 また両端末は端末からのシロアリの侵入を防ぐため金属キャップで覆っている。2)評価方法 ケーブル試料は, シロアリの営巣付近を選んで埋設し, シロアリを誘引するため餌木と交互に設置した。 埋設したケーブルを掘り返しシロアリの食害状況を確認した(写真2)。写真1 汎用的なケーブルの被害状況写真は公益社団法人日本しろあり対策協会 シロアリ(被害・検査・生体)より抜粋写真2 10ヶ月後(餌木は激しい食害有り)

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