しろありNo.165
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30Termite Journal 2016.1 No.165研究発表Presentations at the Research Meetingカンモンシロアリの現場での判断について山口県しろあり対策協会 奥田 英樹 山口県はご存知の通り本州の西の端に位置し三方が海に面し, 山口県を含む周辺地域では古来より大陸との交流が盛んで, 現在も定期フェリーなどを通じて国内外からの人や物資の行き来が活発である。(図1, 2)私がカンモンシロアリという言葉を初めて聞いたのは, この業界に入って1~2年たった平成7~8年の頃であるが, 山口県内においては, 以前より見た目はヤマトシロアリであるが, 被害が雨漏りなど見受けられないのに建物の軒の高さまで進行している案件やヤマトシロアリの被害にしては何となくおかしいといったような案件があったみたいである。しかし当時は現在のようにデジカメやパソコンを頻繁に活用するような時代ではなかったため, 詳細な被害写真や被害状況などのデータが残っておらず, また現場自体もヤマトシロアリの少し変わった被害として処理されていたもようで, その当時のカンモンシロアリとしての事例に関するものは資料として非常に少なく, またその当時携わった人々の記憶をもとに対応していたように見受けられる。しかしカンモンシロアリの防除をより的確に行っていくためには, 現場での状況判断や対応がとても重要になってくるのではないかと考えられる。1.生態, 加害状況, 生息域について カンモンシロアリの生態についてはまだまだ不明な部分が多い。目視ではヤマトシロアリとカンモンシロアリの区別をすることは難しく, 羽アリを見ても区別することは出来ない。しかし現場での判断においては, 羽アリの群飛時期や蟻道の構築状況, 被害状況を見ていく上で, この現場はカンモンシロアリではないかと疑う事が出来ると思う。群飛時期については大体2月から4月上旬頃に群飛するケースが多いと思われるが, もう少し早い時期に群飛した事例も聞いたことがある。蟻道の構築状況においては全てにおいてあてはまるわけではないが, 樹木の枝が分かれるように一本の蟻道から枝分かれしたような蟻道を構築する事や, 多くの空中蟻道を構築する事例が多いように見受けられる。(写真1~9)また被害状況も床下中心だけではなく, 雨漏り等のない建物においても建物上部まで及ぶ事例も多いと感じられる。さらに建物上部への加害スピードも速いように思われる。生息域においては山口県内では下関市, 山陽小野田市, 宇部市, 山口市, 防府市において事例がある。(図1, 2)中でも下関市, 山陽小野田市, 宇部市では事例も多く市内全域に広がっているように思える。また福岡県においては北九州市での事例はあるが他の周防灘を囲む周辺の県及び市町村においても生息している可能性は十分に考えられる。図1 山口県、周辺地図図2 山口県、市町村地図

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