しろありNo.165
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1Termite Journal 2016.1 No.165報 文Reports1.はじめに X線コンピュータ断層撮影(X線CT)装置を用いた木材あるいは竹材穿孔昆虫の虫体の可視化や食害による空洞検出に関する既往の研究において, シロアリ関連では, 医療用のX線CT装置で乾材シロアリCryp-totermes secundusの食害材内部を可視化する試み1), シロアリ塚内部のネットワーク構造の解析2), アメリカカンザイシロアリ(Incisitermes minor)の巣-坑道システムの解析3, 4)が報告されている。また, 木材・竹材穿孔昆虫(乾材害虫)については, カシノナガキクイムシ5), オオナガシバンムシ6, 7), そしてヒラタキクイムシとアフリカヒラタキクイムシ8)の食害材内部の可視化に関する研究, チビタケナガシンクイの成長過程と摂食量の評価に関する研究9, 10)が報告されている。 本研究では, アメリカカンザイシロアリの食害材をマイクロフォーカスX線CT装置で撮像し, 食害材内部の虫体と食害による空洞部分の可視化を試みた。また, 大型X線CT装置を用いて食害材の撮像を行い, 食害によってできた空隙の体積の測定を試みた。そして, 撮像に供した食害材について曲げ試験を行い, 食害材の空隙率と残存曲げ強度の関係についても検討した。2.食害材内部のアメリカカンザイシロアリの可視化2.1 実験方法 断面30×30mm, 長さ50mmの気乾スギ(Cryptomeria japonica)材の木口断面に, 直径10mm, 深さ30mmの穿孔をあけ, その中にアメリカカンザイシロアリの擬職蟻20頭と兵儀2頭を封入した(図1)。シロアリの封入から二日後に, スギ試料片について, マイクロフォーカスX線CT装置((株)島津製作所, SMX-90CT)を用いて撮像を行った。撮像条件は, 管電圧90kV, 管電流0.11mA, X線源と検出器間の距離(SID)を300mm, X線源と試料の回転中心間の距離(SOD)を55mmとし, ボクセルサイズ(分解能)は0.028mm/voxelであった(図2)。X線CT装置を用いたシロアリ食害の可視化および食害材の残存強度評価京都大学大学院 農学研究科・助教 簗瀬 佳之アメリカカンザイシロアリ(Incisitermes minor)擬職蟻:20頭兵蟻:2頭30305030気乾スギ試料片(unit: mm)10X線源検出器回転台試料X線源試料イメージインテンシファイア(検出器)SID=300mmSOD=55mm撮像範囲ステージ(回転台)マイクロフォーカスX線CT装置内図1 木材試料と供試虫図2 アメリカカンザイシロアリ食害材のX線CT撮像   SID:X線源と検出器間の距離(mm)   SOD:X線源と試料の回転中心間の距離(mm)

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