しろありNo.165
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2Termite Journal 2016.1 No.1652.2 結果と考察 図5はアメリカカンザイシロアリを封入したスギ試料片の任意の位置での断面画像の例を示す。撮像視野の関係上, 穿孔の先端部分を中心に撮影を行った。断面画像より, ほとんどの虫体はあらかじめドリルによってあけた穿孔内に生息していたが, 穿孔の先端付近から2か所に食害による穿孔が観察され,虫体も観察されたことから, 食害が進行していることが確認できた。また, 断面画像で放射状にノイズが発生することが観察された。これは, 5分間のCT撮像中に, 試料内部でシロアリが活動することによって発生するものであり, 活動するシロアリ自体を鮮明に撮影することは困難であった。このようにX線CT装置を用いることによって, 内部の食害痕を観察することが可能で, 定期的に撮影することにより, 単位時間当たりの摂食深さ(距離)を計測することや, 3D画像から試料内の空洞部の体積を算出して, シロアリの食害量と木材の強度との関係を明らかにできること, などが期待できる。 図6は10分割した試料の撮像画像のうち, 図5のようなノイズの発生が観察された2つの試料について撮像画像の例を示す。図中の円で囲まれた部分のような放射状に縞模様のノイズが発生は撮影中のシロアリの活動に由来すると考えられるため, 各試料の表面3箇所におけるAE計測結果および分割した試料内のシロアリの頭数を表1に示す。なお, 各計測点において, 2分間のAE計測を3回繰り返した。縞模様のノイズが観察された2つの試料では, 2分間当たりのAE事象数が最大で30と21であった。さらに全ての試料をそれぞれAEセンサ付近で3分割し(図4(b)のA~C), 各 また, アメリカカンザイシロアリ被害がみられるスギ丸太の気乾材(直径約60mm, 長さ約500mm)を50mm間隔で10分割し, CT撮像とアコースティック・エミッション(AE)計測に供した(図3)。それぞれの分割した試料について撮像を行った。撮像条件は, 管電圧90kV, 管電流0.11mA, SID 300mm, SOD 202mmとし, 分解能は0.105mm/voxelであった(図4(a))。さらに, アコースティック・エミッション(AE)法を用いて, 各試料内でのアメリカカンザイシロアリの食害活動をモニタリングした。各試料の表面3箇所にAEセンサ(PZT圧電素子, 共振周波数150kHz)を取り付け, AE検出器(丸和バイオケミカル社製)を用いて2分間のAE計測を行った(図4(b))。AE計測後, 試料を図4(b)の破線部分で3等分に分解し, 各AEセンサの計測結果と対応する分割試料内でのアメリカカンザイシロアリの頭数を計数した。50mm60mmNo.12310・・・・・・・・・・・・・・10mm穿孔の先端(0mm)2.1mm2.1mm6.9mm虫体虫体虫体虫体X線源試料イメージインテンシファイア(検出器)SID=300mmSOD=202mm撮像範囲ステージ(回転台)スギ丸太分割試料の木口断面ABCAEセンサ(a)X線CT撮像(b)AE計測図3 スギ丸太食害材(直径60mm、長さ500mm)図5 試料長さ方向の各位置におけるX線CT断面画像図4 アメリカカンザイシロアリ食害材のX線CT撮像と  AE計測方法

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