しろありNo.166
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7Termite Journal 2016.7 No.1667の被害がみられた。柱, 梁などは外からみた様子では, 大きな被害ではなかったが, 家の片側(道路側)の基礎が15cm沈んでいるとのことであった(写真19)。また, 住宅2は, 二階建て軽量鉄骨の住宅で1990年に建てられたとのことであった。外壁にわずかに亀裂がはいっていたものの外観の被害は軽微であった。また, 内装についてはクロスにもめが入っているとの説明があった。そのほかにも, 比較的年数の経っていると考えられる新耐震の建物がシロアリの被害を受けているものがあった(写真21-23)。最後に, 先述したが比較的新しい建物にも倒壊被害がみられたので, 併せて示す(写真25および写真26)。今後, これら新しい住宅に被害を起こした要因が明らかとなっていくと思うので, 情報収集を続けていただきたい。 さて, 被害のまとめとして, やはり比較的古い旧耐震の住宅の倒壊が多く, また瓦屋根の被害も多くみられた。ただし, 新耐震, 2000年以降の木造住宅においても被害があったため, 精査していくことが必要である。また, シロアリを含む生物劣化においては, 筆者らの調査の範囲では, 15年以上経っているような建物のみでみられたが, 他にもあるかもしれないため, より多くの調査をおこない, それらの建物の被害状況などが明らかになれば良いと考える。また, 被災者への聞き取りより, 前震ではそれほどの被害がみられなかったが, 本震で大きな被害となった建物が多いことが良く聞かれ, その後も余震によって変形が進んでいるとの話が聞かれた。被害で大きく傾いた建物などへの立ち入りなど気をつけて調査することが肝要であること, そして最も重要かもしれないが, 建築基準法が守っているのは, 最低限の安全(倒壊しないこと)であることを申し添えたい。5.さいごに 今回の調査を終えて, 木造を含む住宅の耐震性の確保, そのために今後どのように耐震診断と耐震補強を進めていくのかが重要であることを再確認した。本地震では, 報告にあるように新しい建築年代の住宅も倒壊するという事態となった。そのため, 現在, 日本建築学会や関連学会に所属する多くの研究者をはじめ, 様々な分野においてどうして新しい建築年代の住宅にも被害を受けたものが出てしまったのかについて検討されており, これからの木造に関するルールについて議論が進められるであろう。その中には, 木造では大きな問題となるシロアリを含む木材の劣化についても議論されると考えられる。特に, シロアリを含む生物劣化の被害が多くみられる土台やその付近の柱, そして壁の健全性の担保が, 木材の劣化においては重要な検討項目となると考える。今後, これらの被害の進行と耐震性能の関係を明らかにしていくことと, そのための評価方法の検討が健全性評価のために重要となる。そのため, 生物劣化を受けた部材及び接合部、壁の残存耐力の評価方法の確立の研究を木質構造・材料の研究者と生物劣化の研究者また企業の研究者などが共同で推進していくことが必要となる。これらの研究が進むことによって安全・安心の家造り, 町作りが進むことを願いつつ, 本報告を終わりたい。写真19 住宅1の外観写真20 住宅2の外観

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