しろありNo.166
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19Termite Journal 2016.7 No.16619yakushimanus Hayashiの2種が知られる。なお, 大林・新里1)でスギノアカネの分布に九州が入っているがこれは誤りである。さらに台湾のAnaglyptus higashiyamai Makihara et Hayashiと中国の福建省, 遼寧省3)に分布するAnaglyptus producticollis Gressittの2種が知られ, 計4種が記録されている(図4)。2)日本国内での最近の分布拡大 スギノアカネは本州においては, 最近まで, 茨城県, 山梨県には被害もなく, 虫の記録も無かった(図5左)。しかし, 茨城県では2009年6月27日に八溝山頂上付近で成虫が採集され4), 被害も確認された5)。ただ, 被害は山頂付近のみで, 山頂の神社の修復に使ったスギ材にトビクサレが認められ, 他県から運ばれてきた材から発生し, 定着したと推定される。山梨県では非公式ではあるが10年ほど前に南部の静岡県に近いヒノキ林で被害が見つかっている(図5右)。東京都, 千葉県では家屋から出てきた成虫が発見されたのみである6)。四国での被害は局所的で柳瀬スギで有名な高知県東部地区に集中しており, 地元で土産品として売っているスギのコースターでトビクサレをよく見かける。 サツマスギノアカネトラカミキリは, 屋久島特産と思われ, 元々, スギの自然分布地でなかった九州にはスギノアカネもいなかったし, サツマスギノアカネトラカミキリもいなかったはずである。江戸時代にヤクスギの需要が増え, 鹿児島市城山の裏にヤクスギの貯木場があり, そこから城山のスギに移り, 定着したと推定されている7)。奄美諸島の喜界島で成虫が被害材から発見されったが, これが, 屋久島からか, 鹿児島県本土からの侵入かは, はっきりしていない2)。3)海外の種の分布拡大 中国東北部で, スギノアカネとして報告された種8)はAnaglyptus producticollisであった3)。この地域も全てスギ人工林であり, 中国国内でのスギ被害材の移動に伴い, 侵入定着したと推定される。 台湾のAnaglyptus higashiyamaiも今のところ, 日本の港でタイワンヒノキからインターセプトされた個体しか, 確実なものは見つかっていない9)。 後述するが, スギノアカネは成虫が林分外への飛び出しの少ない種であり, その分布域は主な食樹であるスギ, ヒノキ, ヒバなどの天然分布地ないしはその周辺地域である(図6)。そのため, 虫自体により分布拡大は連続林分でなければ, 移動分散することは考えにくいカミキリである。スギノアカネの仲間は国内外に限らず, 被害材の移動に伴い分布を拡大することが多いようである。図4 スギノアカネトラカミキリの仲間の分布図5 スギノアカネトラカミキリの県レベルでの被害分布図図6 東北地方におけるスギ、ヒノキ調査林分とスギ、ヒバの天然分布地スギノアカネトラカミキリAnaglyptussubfasciatusA.higashiyamai: 台湾山岳地帯サツマスギノアカネトラカミキリA.yakushimanus:屋久島, 鹿児島市, 喜界島A.producticollis:福建省、河南省、遼寧省遼寧省河南省福建省台湾2004年以前でのスギノアカネの生息ないし被害分布図●喜界島2009年以降のスギノアカネの生息ないし被害分布図調査林分

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