しろありNo.166
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26Termite Journal 2016.7 No.16626・中国南部におけるベイト剤を用いた土壌生息性シロアリの防除に関する試み (Soil-termite control practices using bait toxicants in South China)Zhong Junhong氏(Guangdong Entomological Institute, China) 3種の土壌生息性シロアリ, タイワンシロアリ(Odontotermes formosanus), Macrotermes barneyiおよびAncistrotermes dimorphusを対象とし, ヘキサフルムロンとトリフルムロンを有効成分とするベイト剤の効力を評価した。両化合物を0.1〜0.15%含有させたユーカリ樹皮を用いることによって, タイワンシロアリとA. dimorphusのコロニーの活性を著しく減少させることができた。0.1%のヘキサフルムロン含有樹皮ベイト剤は, 貯水池堤防のタイワンシロアリとM. barneyi, およびサトウキビ畑の3種シロアリのコロニーを完全に駆除した。・東南アジアにおけるMacrotermes gilvusの生物地理学と形態学的多様性および共生菌Termitomycesとの相互関係における特異性 (Biogeography history, morphological variation of Macrotermes gilvus and patterns of interaction specicity with its fungal symbiont, Termitomyces sp. in Southeast Asia)G. Veera Singham氏(Universiti Sains Malaysia, Malaysia) スンダ地域は非常に多様な固有種を育んでいる地域である。大陸移動, 氷河期サイクル, 気候変動および火山活動などの多くの環境要因がこれらの固有種の進化に重大な影響を及ぼしてきたことが明らかにされてきている。Macrotermes gilvusは東南アジアに固有の養菌シロアリであり, このような環境要因と自然分布域との関係を検討するための対象生物として適している。M. gilvusの生物地理学と形態学的多様性および共生するシロアリタケ(Termitomyces)との相互関係における特異性に関する研究は, 東南アジア地域における生物種の分布拡散におけるモデルとして有用なだけでなく, シロアリとシロアリタケの共生関係に対する新しい洞察につながるものである。3. 口頭発表Session 1: Biodiversity and systematicsセッション1:多様性と分類・台湾における好シロアリ性生物の新発見とレビュー (New discovery and review of termitophile fauna in Taiwan)Wei-Ren Liang(National Chung Hsing University, Taiwan) 台湾のシロアリ相に関する研究は20世紀初頭に開始された。しかしながら, 好シロアリ性生物についてはこれまでほとんど興味を持たれることがなかった。過去の断片的な報告の取りまとめに新発見の種類を付け加えて, 台湾に分布する7科のシロアリから21種の好シロアリ性生物をリストアップすることができた。・チベット・鴨緑江Zangbo大渓谷保護区から得たヤマトシロアリ属シロアリの分子系統地理学 (Molecular phylogeography of Reticulitermes in Yarlung Zangbo Grand Canyon glacial refugia of Tibet)Deng Feng(Jiangxi Agricultural University, China) チベットで採集した167個の試料を用い, 形態学的観察とミトコンドリアCOⅠ(658bp)DNAバーコーディングによる解析によりヤマトシロアリ属(Reticulitermes)の遺伝子的多様性について検討した。COⅠ遺伝子のシークエンスにより29のタイプが検出された。チベットのサンプルと雲南省, 四川省, 江西省, 江蘇省, 福建省を含む近隣地域のサンプルを比較することによって, ヤマトシロアリ属種の系統関係を明らかにした。Chayu市の標高2,356mの地点からヤマトシロアリ属のシロアリが採集され, これは最も標高が高い地点での採集記録となった。チベットからは2種のヤマトシロアリ属種, R. tibetanusとR. assamensisが認められ, これらはそれぞれ, 3ハプロタイプと5ハプロタイプに分かれた。すなわち, チベットには合計8ハプロタイプのヤマトシロアリ属種が存在することになる。しかしながら, これらのハプロタイプについて系統地理学的な関連性はなかった。これら2種にR. jiangchengensisを加えた3種の種間および種内の遺伝子的距離は0.090〜0.097および0.002〜0.005であった。R. tibetanusとR. assamensisは両種ともChayu市とMotuo市に生息し, また, R. jiangchengensisはR. assamensisの異名であると考えられた。Chengduから

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