しろありNo.166
39/69

35Termite Journal 2016.7 No.16635の侵入に注意し防除する必要がある。イエシロアリの分布に影響を与える気候要因としては, 降水量の影響は少ないものの, 積算温度と最低温度が重要であることが判明した。過去の記録の検討と併せて, Yibin(Chengdu, Chognqing, 四川省)からWuhan(湖北省)及び Shuyang(江蘇省)のラインより南がイエシロアリの分布可能域と考えられる。・キノコシロアリのケミカルコミュニケーション (Chemical communication in the fungus-growing termites (Isoptera: Macrotermitinae))Wen Ping (Chinese Academy of Science, Kunming, China) シロアリは道しるべフェロモンを用いて採餌活動を行っている。中国においてキノコシロアリの優占種であるタイワンシロアリ(Odontotermes formosanus)では, 道しるべフェロモンに (3Z)-dodecen-1-ol(DOE)と(3Z, 6Z)-dodecadien-1-ol(DDE)が含まれており, 採餌状況と2成分の構成比には関連性がある。多くの労働力が必要な場合, リクルート成分(DDE)が大量に分泌される。Odontotermes種とAncistrotermes種では, 雌の腹板腺から分泌されるDDEは雄を誘引する性フェロモンとしての役割もあるが, 雄はペアリングにはDOEのようなマイナー成分をプラスして用いている。このシロアリのフェロモン混合物では, 微量な異性体が見つかっている。Odontotermes種とAncistrotermes種では, フェロモンは量的にも質的にも多様化している。・東アジアにおけるヤマトシロアリの遺伝子分化 (Genetic dierentiation of Reticulitermes speratus in East Asia)Deng Feng(Jiangxi Agricultural University, China) 中国におけるヤマトシロアリのCOⅡ遺伝子のシークエンスを行い, NJ法とML法によりその類縁関係を解析した。さらにGenBankに登録された韓国と日本の集団のデータとの比較により, 東アジア地域におけるヤマトシロアリの伝搬ルートについて考察した。得られた結果は以下の通りである。①655bpのシークエンス領域は, 581bpの保存領域, 74bpの可変領域および62bpの情報領域からなり, 平均G+C率は37.0%, 平均A+T率は63.0%であった。②日本と韓国の集団は日本南部+韓国と日本北部の2つのグループに大きく分けられ, 中国の集団も大きく2つのグループとなった。③中国のヤマトシロアリには, R. speratus speratusとR. speratus kyushuensisを含む2つ以上の亜種が存在する。④ヤマトシロアリは, 中国東部から日本本土に伝搬した後, 日本から韓国に伝搬したと考えられる。

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る