しろありNo.166
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39Termite Journal 2016.7 No.166京都大学生存圏研究所 森 拓郎シロアリ食害を受けた柱-土台接合部の引張性能研究トピックスResearch Topics1. はじめに 木造建築物の長期利用を推進する中で, 木材や木質材料の耐久性は非常に重要な課題となっている。これに伴い, 生物劣化による木材の損傷と残存耐力に関する評価は, 木造の安全性を担保するために重要であり, これらの木材や接合部の非破壊による評価方法の確立が急がれている。 そこで, 本研究では, 生物劣化を受けた接合部における引張強度性能評価や, 生物劣化を診断する機器の性能を評価することを目的として, シロアリの食害を受けた接合部の引張試験を実施したので, 結果について報告する1)。2. 試験概要2.1 試験体概要 表1に試験体リスト, 図1に試験体形状及び寸法を示す。樹種は, 柱にはスギとホワイトウッド集成材, 土台にはスギとヒバを用いた。試験体は土台と柱の接合部を長ほぞに込み栓を打込んだものとVP金物で補強したものを用意した。込み栓にはアカガシを使用した。以下, 樹種がホワイトウッドとヒバで込み栓により接合したものをWK, VP金物で補強したものをWP, 樹種がスギで込み栓により接合したものをSKとする。2.2 シロアリによる食害操作 シロアリによる食害処理は, 鹿児島県吹上浜の松林にある京都大学生存圏研究所共同利用施設である生活・森林圏シミュレーションフィールド(LSF)にて実施した。本処理を実施するに際して, 先にイエシロアリを試験箇所に寄せた後, 食害処理を開始するためにブロックを設置し, その間に杭を打ち込み, その上に試験体を設置することでシロアリが試験体へ進入しやすいようにした(写真1, 2参照)。また, シロアリが活動しやすい環境をつくるため, 簡単な小屋を作り, その中で食害を進行させた。(写真3, 4参照)。表1 試験体リスト写真1 試験体設置場所の ブロックの様子写真3 シロアリによる 食害の様子写真2 試験体設置の様子写真4 試験体を設置した 小屋の外観図1 試験体形状及び寸法試験体名柱樹種土台樹種補強種類加力方法試験体数単調5体繰り返し5体単調5体繰り返し5体単調5体繰り返し5体WKWPSKホワイトウッド込み栓VP金物込み栓スギヒバスギ10584100790100990105301818800105905105105321818105321515込み栓VP金物

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