しろありNo.166
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1Termite Journal 2016.7 No.166京都大学 生存圏研究所 助教 森  拓郎京都大学大学院 農学研究科 助教 簗瀬 佳之平成28年熊本地震における木造住宅の被害調査と生物劣化の報告報文Reports1.はじめに 4月14日21時26分, 熊本県熊本地方を震央とする布田川・日奈久断層において, 震源の深さ11km, 気象庁マグニチュードMj6.5の地震(前震)が発生し, 熊本県益城町で震度7を観測した1-3)。その後4月16日1時25分に, 同じく熊本県熊本地方を震央とする, 震源の深さ12km, Mj7.3, の地震(本震)が発生し, 熊本県西原村と益城町で再び震度7を観測した1-3)。本地震では熊本県から大分県に亘る広範囲での小さな多数の余震に加え, 震度5強以上を記録した比較的大きな余震が十数回起こっていることも特徴的であり, 図1に示すように主だったものだけでも16回にものぼっている3)。また, 本地震による建物や塀の倒壊などに, 関連死を含めると69名の方が亡くなる大惨事となっている(平成28年6月7日現在)2)。家屋の被害も大きく, 全半壊をあわせると28,000棟以上2)に上り, 阿蘇神社や熊本城の被害は多くのメディアで取り上げられ, また山崩れや土砂崩れなども多数見られ, 南阿蘇村へ通じる阿蘇大橋が崩落したのは衝撃的であった。現在, 日本が地震の活動期であると言うことを改めて感じさせられる出来事となっている。さて, 本報では, 筆者らが地震発生3週間後の熊本市内及び益城町の木造建築物を中心とした調査をおこなったので報告する。2.建物被害の概況 まず, 地震動について概説しておく。本地震における前震および本震の益城町宮園の地区で観測された地震動を用いて建物における減衰を5%として一質点系で振動を計算したスペクトルを図2に示す1)。図2より, キラーパルス4)とよばれる木造住宅に大きな被害が発生するとされる1-1.5秒の振動が大きかったことがわかる。先にも述べたが, 建物の全壊および半壊が28,000棟を超えたと報告されており, このデータからも被害の大きさが看取される。また, 本地震で観測された地震動は, 1995年兵庫県南部地震で計測された最大の地震動であるJR鷹取波よりも大きな地震動であったと報告されている5)。 つぎに, 建物被害の全体的な傾向について述べる。これ以降, 旧耐震, 新耐震, 2000年以降と, 建築年代を別けて被害の評価をしており, また一般紙などでも同様に評価されているものが多くみられるため, 説明を加える。旧耐震とは1981年以前の耐震基準で建設された建物で, 必要な壁の量などが比較的少なく, 耐震性能に劣るものである。一般的に古い木造住宅と言われているものであり, 本地震でも最も被害を受けている。また本地震で被害が報告されている鉄筋コンクリート造のマンションなどはこの年代に建てられたものがほとんどのようである。新耐震とは1981年以降で2000年までに建てられたものである。1981年に建築基準法が新しくなり, その際に旧耐震よりも必要な壁量(地震などの水平力に抵抗する壁)などが増えたこと図1 震央分布図

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