しろありNo.167
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15Termite Journal 2017.1 No.16715*:p<0.05(Wilcoxonの順位和検定(U検定))図4 「龍谷の森」試験地における亜鉛の分析結果ると考えられる。また, シロアリが塚や蟻土の構築に用いる土壌は, シロアリの体長がかなり小さい(ヤマトシロアリの場合3〜6mm程度)ことや, シロアリがコンクリートでも噛み砕くことのできる強靭な顎を持つことから考えて, 元々微細な状態で存在しているものか, あるいは, 噛み砕いて微細化したものであると考えられる。国際法による土壌の粒径区分において, 最も微細な土壌は, 粒径が0.2μm以下の粘土であり, シロアリが蟻土の構築に使用している土は, 粘土である可能性が高いと考えられる。実際, 熱帯のシロアリでは, シロアリ塚を構成する土壌中に粘土やシルトなどが濃縮されることが多く5), 周辺土壌と比較した場合の粘土含量は, 50%以上も高くなることすらある6,7)。この巣塚を構成する土壌において粒径組成が変化するのは, シロアリの土壌細粒子に対する選択性の結果であると考えられている6-8)。 土壌のごく微細な部分においては, 粘土鉱物と腐植が結合して, 粘土・腐植複合体を形成しており, 通常これは, 土壌コロイドと呼ばれている9)。この土壌コロイドは表面にマイナス(-)の荷電をもっており, プラス(+)の荷電をもつカルシウム, マグネシウム, カリウム, ナトリウムなどの陽イオンを吸着保持している9)。前述したように, シロアリが蟻土構築のために取り入れた土は粘土と考えられ, また, 蟻土の接着に用いられる唾液などの分泌物や排泄物には, 餌として摂食した木質資源の分解物, すなわち腐食質が含まれていると考えられる。よって, 蟻土は, 粘土と腐植が結びついた土壌コロイドが多く存在する可能性が高いと考えられ, それに伴ってナトリウム, カリウム, リン, カルシウム, 鉄, マグネシウム, マンガン, 亜鉛などの金属陽イオンが, 周囲の土壌よりも多く保持されていたと考えられる。

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