しろありNo.167
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41Termite Journal 2017.1 No.1671) シロアリ代謝ガスとして水素ガスに着目した理由 ①メタンガスは, 地中・大気中に存在し, 代謝ガスとの分離が難しい。また, シロアリが存在しなくても木材から発生するため, シロアリの特定には難点がある。かつ, 高感度なメタンガスセンサは実用化されていない。 ②大気中の水素ガス濃度は, 1ppm以下と非常に少ないため, シロアリの代謝ガスの特定が容易となる。 ③半導体水素ガスセンサは, 水素ガスに選択的な感度を有しており高感度である。また, 共存ガスの影響を受けにくい。2) ポータブル水素ガス検知器によるシロアリ検知実験  ポータブル水素ガス検知器XD-703D(新コスモス電機製)を使用してシロアリの検知実験を実施した。対象ガスを内蔵ポンプで0.2ℓ/min吸引して水素ガス濃度を連続的に測定するもので, 図3は, 森林総合研究所のシロアリ実検棟の屋外(約0.5ppm)から室内(約2ppm)に移動したときの水素ガス濃度変化を記録したものである。写真2は, 実験棟内シロアリ試験木材の近傍のガスを吸引し, 水素ガス濃度を測定している状況を示す。3) ガスクロマトグラフによるシロアリ検証実験  2種類のシロアリ(イエシロアリ, ヤマトシロアリ)について, 水素ガスの選択性の高い, 高感度な半導体水素ガスセンサを内蔵したガスクロマトグラフSGHA-P2(FIS製)を用いて, 発生する代謝水素ガス濃度を時間経過毎に測定することで各々のシロアリの水素ガス発生量を定量的に評価した。  内容積0.4ℓの容器に餌木を入れ, それぞれイエシロアリ100頭, ヤマトシロアリ100頭とシロアリ無しの3種類の密封サンプルを作製した。密封後, 0, 30, 60, 90, 120分後の容器内部のガスをシリンジで2mℓ採取し, ガスクロマトグラフで水素濃度を測定した。図4は, 経過時間に対する各サンプルの水素ガス発生濃度変化を示す。図5と図6は, それぞれイエシロアリとヤマトシロアリのガスクロマトグラフ測定例である。  表1は, 図4のシロアリ発生水素濃度結果から, シロアリ1頭の1時間あたりの水素発生量を算出したものである。表1  1時間あたりのシロアリ水素発生量(単位:nmol)経過時間ヤマトシロアリイエシロアリ0-60分0.289 0.784 30-90分0.179 0.357 60-120分0.119 0.231 注) 1nmol=10-9mol, 体積22.4ℓ中に含まれる水素ガス1nmolの濃度が1ppb 写真2 水素ガス検知器によるシロアリ検知状況図3 シロアリの代謝水素ガス測定例・シロアリ試験木材・水素ガスセンサ:XP-703Dシロアリ試験木材に接近

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